スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル医学生理学賞を、アフリカなどの感染症に大きな治療効果を挙げている薬剤「イベルメクチン」を開発した大村智・北里大特別栄誉教授(80)に授与すると発表した。年間2億人に使われ、多くの命を救う発明が、最高の栄誉に輝いた。
日本人のノーベル賞受賞は2年連続で23人目。医学生理学賞は12年の山中伸弥京都大教授以来となる3人目の快挙で、日本オリジナルの研究成果が高く評価された。
大村氏は、日本の土壌で発見した細菌の作り出す物質が、寄生虫に効果があることを発見。1973年からの米メルク社との共同研究でイベルメクチンを開発した。この薬は、線虫類やダニ、ウジなどの寄生虫に高い効果があり動物用の薬として普及した。
授賞式は12月10日にストックホルムで開かれ、賞金800万クローナ(約1億2千万円)が大村氏ら3氏に贈られる。(共同)
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2015年のノーベル医学・生理学賞に輝いた北里大特別栄誉教授の大村智氏(80)は5日午後7時過ぎ、産経新聞の電話取材に応じ、喜びを語った。主なやり取りは次の通り。
−−今の気持ちは
「急な話で、まだ気持ちが整理されていない。5時半ごろに(カロリンスカ研究所から)研究室に電話があって驚いた」
−−どう伝えられたか
「僕とキャンベルと、マラリアの新治療法の発見者の3名に授賞することにしたといわれた。『コングラチュレーション、賞を受けるか』というので、謹んでお受けしますと答え、12月に会いましょうといって電話を切った」
−−受賞できると思っていたか。予感はあったか
「候補者といわれるのは立派な人ばかり。私の仕事なんて、そんなたいしたことないと思っていたので、まさかと思っていた」
−−誰に真っ先に喜びを伝えたいか
「研究室で一緒に苦労した人たちにまず伝えたい。あと、家内は16年も前に亡くなったが、いたら本当に喜んでくれただろうと思うと残念だ」
−−どんな点が評価されたと思うか
「泥臭い仕事であってもこつこつと細菌を見つける仕事に精進してきたことを認めていただいたと思う」
−−今後の研究は
「微生物には、まだまだ分からないことが多く、その中には人に役立つこともいっぱいあるはずだ。そういうことに若い人たちに興味を持ってもらい、さらに研究を進めてほしいなと思っている」
−−研究者としての信条は
「世の中に役立つ仕事を一つでも二つでも余計にやりたいと思って研究を重ねてきた。それが、北里研究所の実学の精神だ」