TPP 巨大経済圏の実力
12ヵ国が交渉に参加する環太平洋経済連携協定(TPP)。2013年7月に日本がTPP交渉に参加してから2年あまり、太平洋を囲む巨大経済圏が実現に向けていよいよ動き出す。域内のヒト・モノ・カネの動きが活発になり、参加国の経済成長を促す効果が期待される。TPPの実力をデータから探る。
TPP参加国のGDPは世界の4割を占める
2020年、TPP参加国合計のGDPは2割拡大する
TPPが発効すれば世界の国内総生産(GDP)の4割近くを占める巨大な自由貿易圏が誕生する。域内人口は世界の1割の8億人。国際通貨基金(IMF)の見通しによると、2020年には域内のGDPは14年比24%拡大し、人口も5%増える。これに対して日本の同期間のGDPは7%増、人口は2%減となる見通し。少子高齢化や人口減が重荷となる日本経済にとって、TPPは伸びしろの大きなアジアの成長を取り込む好機と期待されている。
世界では、TPPのほかにも多国間で貿易や経済活動の障壁を取り除こうとする「メガFTA(自由貿易協定)」とよばれる広域の自由貿易圏構想が進む。主要なFTAの経済規模や人口規模はどれほどあるのか。また、今後の成長見通しはどうか、動くグラフで探ってみよう。
主要FTAのGDPと人口規模
- TPP参加国
「ALL」は主要FTAに参加する49カ国の合計
| 名称 | 加盟国 | 段階 |
|---|---|---|
| TPP (環太平洋経済連携協定) |
オーストラリア, ブルネイ, カナダ, チリ, 日本, マレーシア, メキシコ, ニュージーランド, ペルー, シンガポール, 米国, ベトナム | 2015年10月に大筋合意 |
| ASEAN (東南アジア諸国連合) |
ブルネイ, カンボジア, インドネシア, ラオス, マレーシア, ミャンマー, フィリピン, シンガポール, タイ, ベトナム | 1992年にASEAN自由貿易地域(AFTA)を創設 |
| RCEP (東アジア地域包括的経済連携) |
日本, 中国, 韓国, インド, オーストラリア, ニュージーランド, ASEAN | 交渉中 |
| NAFTA (北米自由貿易協定) |
カナダ, メキシコ, 米国 | 1994年に発効 |
| EU (欧州連合) |
オーストリア, ベルギー, キプロス, エストニア, フィンランド, フランス, ドイツ, ギリシャ, アイルランド, イタリア, ラトビア, ルクセンブルク, マルタ, オランダ, ポルトガル, スロバキア, スロベニア, スペイン, ブルガリア, クロアチア, チェコ, デンマーク, ハンガリー, リトアニア, ポーランド, ルーマニア, スウェーデン, 英国 | 1993年に設立 |
| TTIP (環大西洋貿易投資協定) |
米国, EU | 交渉中 |
| 日EU・EPA | 日本, EU | 交渉中 |
| 日中韓FTA | 日本, 中国, 韓国 | 交渉中 |
日本からの輸出の3割がTPP参加国に向かう
- TPP参加国
日本の輸出額は約6900億ドル(2013年)。そのうちTPP参加予定12カ国への輸出額を足し合わせると2150億ドルと全体の3割を占める。日本政府は交渉参加前の13年3月、TPPによって貿易にかかる関税が撤廃されれば輸出が2.6兆円、輸入が2.9兆円増えるとの試算を示している。関税撤廃による貿易の促進や、通関手続きの簡素化やビジネス関係者の入国手続きの円滑化などによって、国境を越えた経済活動が活発になりそうだ。
日本の対米輸出の4割を占める輸送用機器
日本にとって最大の輸出先は米国で、自動車の完成品や自動車部品などの輸送用機器は対米輸出の4割を占める主要な輸出品目だ。TPPの日米協議では、米国が日本製の自動車部品のうち全品目の8割超について、2.5%の関税を即時撤廃する見通しとなった。一方、自動車本体に課す2.5%の関税は30年程度という長い期間をかけて撤廃していく。
反対に日本が守勢に回ったのが、日本がコメなどの農産品に課している輸入関税。日本は海外産のコメについて原則1キログラムあたり341円の高関税を課しているが、TPP交渉では高関税を維持する代わりに無税の輸入枠を設定する。また日本が米国産の牛肉や豚肉などに課している関税も引き下げる方向だ。政府試算によると、海外産の安価な農産品の輸入が拡大することで、国内の農林水産物の生産額は3兆円減少する。
日本の輸入相手、中国の存在感が高まる
「中国がそうする前にやるべきだ」。オバマ米大統領は今年6月、TPPには中国が貿易のルールづくりを主導することに対抗する意味合いがあると語った。中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通じ、アジア地域への影響力を高めようとしているさなか。TPPは関税撤廃にとどまらず、知的財産や国有企業改革、労働、環境など幅広い分野のルールを定めることで、中国をけん制する狙いが込められている。
一方、日本にとって中国は既に最大の輸入相手であり、輸出先としても米国に次ぐ2番手。他のTPP参加国にとっても中国との貿易は無視できない水準にまで高まっている。TPPに中国の台頭を抑え込む力がどれほどあるのかは未知数だ。
TPP参加国の輸出入の構造を、相手国別・品目別にグラフで探ってみよう。
TPP参加国はどこに何を輸出しているか
グラフ内の国名(輸出先)のクリックまたはダブルタップで、輸出の品目が見られる。
(ベトナムは除く)
- TPP参加国
TPP参加国はどこから何を輸入しているか
グラフ内の国名(輸入先)のクリックまたはダブルタップで、輸入の品目が見られる。
(ベトナムは除く)
- TPP参加国
- 取材・制作
- 牛込 俊介、清水 明、安田 翔平、山崎 亮、矢崎 裕一
- データ出典
- World Economic Outlook Database April 2015(IMF)
- World Integrated Trade Solution(World Bank)