記憶:寝ている間に「情報」が定着…仕組み解明へ一歩

毎日新聞 2015年10月05日 12時54分

 寝ている間に記憶が定着する仕組みの一端を解明したと、広川信隆・東京大特任教授(細胞生物学)らのチームが米科学誌ニューロンに発表した。睡眠中やリラックスしている時ほど、記憶の保存に関わっていると考えられる脳の神経細胞の接合部(シナプス)に接着分子が多く運ばれ、神経細胞同士の結合が強まっていたという。

 生物には、生命活動に必要な物質を体のあちこちに運ぶ役割のたんぱく質が数十種類あり、「分子モーター」と呼ばれる。チームは、細胞同士を接着する分子「Nカドヘリン」をシナプスへ運ぶ分子モーター「KIF3A」に注目。培養した神経細胞を使った実験などで、KIF3Aの構造の一部が変化するとNカドヘリンを運べる量が2.5倍になることを突き止めた。

 また、神経活動が抑えられると、KIF3Aの構造が変化して輸送能力が上がることも実験で確かめた。シナプスでのNカドヘリンの増加が、情報を取捨選択して記憶として定着させることにつながっていると考えられるという。

 広川特任教授は「動物実験に進んで、生体での分子モーターの働きを確認したい」と話す。【斎藤広子】

最新写真特集