年金制度を考える(4) 積み立て方式に移れず(10月5日日本経済新聞)
一橋大学教授 小塩隆士
(1)賦課方式の年金制度は、少子高齢化が進んだ場合、保険料を引き上げるか、もしくは給付水準を引き下げるかしか対策がありません。
これは、若い世代にとっては困ることです。
自分で自分の老後の面倒をみる積み立て方式への移行はできないのでしょうか。
(2)積み立て方式に移行するには、賦課方式の下ですでに年金の受け取りを約束されている人たちの年金を、誰が負担するのかという問題が生じます。
移行期には、自分の年金のために支払う保険料と、政府が約束した年金の財源調達のために支払う保険料の両方を負担させられます。
これを「二重の負担」といいます。
この負担を考えると、積み立て方式への移行は難しくなります。
(3)政府が国債発行でまかない、その償還を将来にわたって各世代が少しずつ負担するという改革もあり得ます。
これだと、追加的な負担は一つの世代に集中せず分散します。
しかし、それでも積み立て方式に移行することで発生するメリットと、移行によって必要になる追加的な負担は完全に相殺されることが理論的に分かっています。
(4)しかし、ここで注意が必要です。
右に紹介した説明は「積み立て方式に移行しても、状況は変化しない」と言っているだけです。
積み立て方式より賦課方式のほうが優れているとか、賦課方式にとどまるべきだ、と主張する根拠にはなりません。
(5)賦課方式にとどまるだけでは問題は解決しません。
少子高齢化の下では維持が難しくなり、世代間格差も残ります。
給付を削減すればよいのですが、高齢層が強く反発します。
積み立て方式が「二重負担」の処理に苦慮するように、賦課方式の下での改革も難しいのです。