安倍晋三首相は、総会での演説など一連の国連外交を終えて帰国した。
今回は、9月に成立した安全保障関連法を踏まえ、安倍首相が国連でどんな国際貢献を打ち出すか注目された。
首相は演説で「日本の新しい旗は、国際協調主義に基づく積極的平和主義だ」と強調した。
国連平和維持活動(PKO)については「もっと幅広く活動できるよう、つい最近、法制度を整えた」と述べた。
安保法が抑制的な言い回しになったのは、首相が国内の強い反対論を意識しているからだ。国連本部のある米ニューヨーク中心部でも、現地在住者らが反対集会を開いた。
今後、PKOなどでの具体的な法の運用と活動内容を厳しく注視していきたい。
安保法は9月30日に公布され、半年以内に施行される。
既に政府は、自衛隊の武器使用の手順などを定めた部隊行動基準の見直しに着手した。
早ければ来年5月、アフリカ・南スーダンで実施しているPKOに「駆け付け警護」の任務を追加する方針だという。
駆け付け警護は武装集団から国連要員らを救出する。安保法に含まれる改正PKO法で治安維持活動などと共に可能になった。
首相は、米国が主宰したPKOに関するハイレベル会合での演説では、道路などの整備のほか、国連本部や現地司令部への幹部自衛官の派遣、各国隊員の航空輸送支援などを例示して「さらに貢献する」と訴えた。
自衛隊の活動範囲は、これまで以上に危険な地域へ広がる可能性が高い。
秋の臨時国会でも、こうしたPKOの任務拡大に伴うリスクなど徹底した審議が必要だ。
また首相は国連演説で、欧州の懸案となっているシリアなどからの難民対策に約970億円の支援を表明した。中東・アフリカの安定化支援にも、約900億円の拠出を約束した。
ただ、日本での難民受け入れは会見で否定的な見解を示した。欧州連合(EU)が大量の受け入れに尽力し、米国なども積極的に動いている。だが、日本のシリア難民の受け入れは昨年末までにわずか3人にすぎない。
中東から遠い地理的条件や、言葉と慣習など文化の違いがあるにせよ、今のままでよいのか。この問題も国会でただしてほしい。
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