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【社会】

自治体も住民も心配 マイナンバーあすから通知 トラブル未知数

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 国民一人一人に十二桁の番号を割り当てる「マイナンバー制度」で、番号を知らせる通知カードの発送が五日から始まる。郵送先は全国の約五千五百万世帯。住民票と異なる所に住んでいる人にはカードが届かない可能性が高く、自治体は対応に追われている。サイバー攻撃による情報流出への対策にも、自治体の不安が広がっている。

 「区内に住民票はあるが、住んでいない。どのように受け取ればいいか」「転送してもらえませんか」

 東京都文京区が、今月から区役所の一室に設置したマイナンバー制度専用の窓口やコールセンター。二日も区民からの問い合わせが相次ぎ、区の委託業者のスタッフが応対した。

 通知カードは、住民票の住所に簡易書留で郵送される。しかし、不在や住民票を異動せずに引っ越していると、郵便局へ持ち帰りになり、最終的に自治体へ戻される。この場合、窓口に受け取りに行ったり、自治体に受け取り方法を相談したりする必要がある。

 十一万四千世帯に発送する文京区は、郵便局の情報などから、一回目の発送で25%の二万八千五百通以上が持ち帰りになると想定。コールセンターは、一通でも多く届かせるための取り組みの一つだ。

 国際的な企業が集まる港区も、「住民票を残して海外へ赴任しているケースも想定される」と15%ほどが区へ戻ると見込む。千葉県柏市も「二割ぐらい届かない」とみて、コールセンターを開設した。

 群馬県高崎市の担当者は「前例がなく、どの程度戻ってくるのか読めない」と不安を話す。対策として、不在の人に普通郵便を別途送って受け取りを促す。その場所に住んでいなくても郵便局へ転送届が出ていれば、普通郵便なら転送され、手元に届く可能性があるためだ。

 保管も大変だ。二十三区で最多の八十八万人を抱える東京都世田谷区は、世帯数の一割にあたる四万〜五万通が区へ戻ると見積もる。保管と、取りに来た人へ手渡す窓口として、交通の便のよい三軒茶屋駅前の再開発ビル内に、専用スペースを整備する。

 「三月に閉店した元喫茶店を改修する。入り口にシャッターが下りる構造で外部から侵入しにくい」と住民記録・戸籍課の和久弘幸課長。「大切な個人情報なのでしっかり守らないと」と話す。

◆個人情報保護「100%は無理」

 マイナンバー制度の個人番号は、税の納付状況、児童手当、生活保護といった社会保障の情報などにつながる。自治体は、パソコンをウイルス感染させて情報を盗み取ろうとする「標的型メール」などのサイバー攻撃を受けた際に、外部に流出させないためのセキュリティー対策を迫られる。

 「個人情報を扱う端末と、インターネットで外部環境につながる端末は物理的に切り離している。システムの弱点を突かれて漏れることはあり得ない」。横浜市の担当者は強調する。

 ただ、セキュリティー対策は自治体ごとに異なり、埼玉県横瀬町の担当者は「今は個人情報を庁内だけで利用しているが、マイナンバー制度が始まれば外部ともつながる。どんなに対策をしても、100%にならない」と心配する。

 東京都三鷹市の担当者は「最大の穴は人(職員)」と打ち明ける。サイバー攻撃の手口は日々刻々と進化していて、職員の知識がどこまで追いつけるか不安を抱える。

 国立市は、二年前から年二回、不審なメールを見抜く訓練をしている。抜き打ちで職員百人ほどに偽のメールを送り、開かないかどうかチェック。中には引っ掛かる職員もいるという。「悪意のメールは届く前に削除し、もし入っても情報流出につながらない仕組みを研究したい」と担当者。国に対しても「自治体は規模がまちまちで、専門職員を確保できないこともある。全国規模で安全を保てる対策をしっかり立ててほしい」と注文する。

<マイナンバー制度> 日本に住民票のある国民や一定期間在住する外国人に12桁の番号を割り当て、税や社会保障などの個人情報を行政が一元的に把握できるようにするしくみ。番号は情報漏えいがあった場合などを除き生涯変わらない。5日から通知が始まり、活用は来年1月から。就職や確定申告、児童扶養手当の受給などの際に必要になる。予防接種や特定健診(メタボ健診)の履歴のほか、2018年からは任意で預貯金口座の情報にも結び付けられる。また、希望者には来年1月以降、身分証としても使える写真付きの「個人番号カード」が交付される。

 

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