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【社会】

反戦 願い集めて 絵本「戦争のつくりかた」短編アニメに

アニメを手がけた「NOddIN」の丹下さん(左)と関根さん=2日、東京都目黒区で

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 東京を中心に活動するアーティスト集団「ノディン(NOddIN)」が、日本が「戦争できる国」になる過程を描く絵本「戦争のつくりかた」を原作にした短編アニメーションを完成させ、都内で開催中の展示会で4日公開する。企画した映像作家の丹下紘希(たんげこうき)さん(46)は「映像という言語で国境を超えて、反戦を願う声を上げていきたい」と語る。 (安藤恭子)

 「わたしたちの国は『戦争しない』と決めました。でも、しくみやきまりを変えていけば、戦争できる国になります」。少女が戦争を象徴する兵士と向かい合う場面から、七分半のアニメは始まる。

 「戦争のことは、ほんの何人かの政府の人たちで決めていい、というきまりを作ります」「戦争に参加できる、と憲法を書きかえます」−。英語のナレーションに日本語の字幕を載せ、戦争できる国へと向かおうとする日本への警告を世界に発信する内容だ。

 原作の「戦争のつくりかた」(マガジンハウス)は十一年前、イラク戦争への自衛隊派遣に反対する市民のグループが刊行。易しい言葉でその後の安保法制の整備や改憲を目指す政府の動きを記し、「予言の書」として話題に。昨年には、集団的自衛権行使容認の閣議決定などの動きを盛り込んだ新装版が出版された。

 「日本は絵本が警告する戦争に近づいている」と危ぶんだ丹下さんがアニメ化を構想。昨年夏から制作に取り掛かり、アニメ作家や広告映像、音楽関係者ら約四十人の協力で完成した。

 場面を割り振り、できた映像をつなぎ合わせる「リレー方式」で作ったため、さまざまな手法の映像が登場するのが特徴。ノディンに所属する総合監督の関根光才(こうさい)さん(39)は「多くの人の思いが詰まった作品になった。アニメの分かりやすさを通じ、見る人が日本の進む道を考えるきっかけとなれば」と願う。

 完成したアニメは「疑え」をテーマに、目黒区中央町のギャラリー「クラスカ」で開催中のノディンの展覧会で、四日午後三時と五時四十五分に上映する。今月半ばには、インターネットでも無料公開する予定。

<ノディン(NOddIN)> 福島第一原発事故などで、政府の原発や安全保障政策に疑問を抱くようになった映像作家らのグループ。「日本(Nippon)をひっくり返して見る」という思いをグループ名に込め、2012年末に発足。展示会を毎年開いて、社会へのメッセージを込めた作品を発信してきた。東京都内で活動するアーティストを中心に約30人が所属している。

 

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