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【政治】

これからどうなる安保法 (7)防衛費増加の恐れ

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 安全保障関連法で、自衛隊の活動が大幅に拡大する。防衛費も増えていく可能性があるが、安倍晋三首相は「この法制で防衛費が増えることはない」と直接的な影響を否定している。だが、必ずしも首相の言葉通りには受け取れない。

 防衛費は「中期防衛力整備計画(中期防)」で、五年間の予算の枠が決められている。今の中期防(二〇一四〜一八年度)は計二十四兆六千七百億円。前回中期防に比べ総額は一兆二千億円近く増えている。首相は安保法成立で今の中期防は変更しないとしている。

 だが、中期防で示すのは当初予算の総枠だけで、補正予算は枠外。安保法による活動拡大の影響で経費が増えた場合、補正予算で対応する可能性がある。

 さらに問題なのは、現在の中期防が終了する一八年度の先だ。新たな中期防以降は、防衛費がこれまで以上に増える恐れがある。

 明確な予兆は既にある。高額な武器・装備を買う場合などに、後年度に分割して支払いを先送りする「後年度負担」という「ローン」を大幅に増やしているのだ。民主党政権下の一二年度は当初予算ベースで三兆一千億円台だったが、安倍政権で急増し、一五年度は四兆三千億円台に積み上がった。一六年度概算要求は四兆八千億円台で右肩上がりだ。

 最近は垂直離着陸輸送機オスプレイ、無人機グローバルホーク、日米共同で弾道ミサイル迎撃に対処できるイージス艦など高額な武器・装備の購入が目立つ。安倍政権は、安保法成立前から自衛隊活動拡大の準備を進めてきたといえる。「ローン」は現在の防衛費は抑制できるが、数年後には増加要因になる。

 安保法の成立は、一部の活動を日本に肩代わりさせ、軍事費を削減したい米国の期待に、安倍政権が応えているとの側面がある。

 安保法で自衛隊の海外任務が増え、武器・装備を増強していけば防衛費は増加せざるを得ない。そうなれば社会保障費などを圧迫し、ツケは国民生活に回ることになる。 (中根政人)

 

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