こんにちは。運転中にイライラすると夫を降ろしてしまう貫洞です。
そんなわたしですが、「心から愛する人と結婚した」という自負があります。(説得力ないw)このブログにもちょこちょこと登場している、夫。
今週のお題が「結婚を決めた理由」であるのをいいことに、夫について改めて語ってみようと思います。
■出会いは愛人
夫との出会いは「愛人」です。おしゃれに言うと「ラ・マン」。あれですね、知人から「ある人の愛人になりませんか」とお声がかかったわけです。
当時夫はいろいろあったようで「数人の愛人とライトな関係を続けたい。もう結婚はしなくていい」という考えでした。それで愛人を紹介してくれとあちこちで言っていたようです。わたしはそんな夫の愛人候補として、引き合わされたのです。
※結婚前の夫のことは、Iさんと書かせていただきます。
■死ぬ気で愛人稼業へ
わたしは「誰かの愛人になる」という覚悟を持ってIさんに会いました。当時のわたしは、どこか人生に対して投げやりというか、エネルギーのかたまりが行き場をなくして体内が澱んでいる、そんな状態でした。
何も生み出さない駒としての仕事。思考は必要なく、仕事が無くなれば切り捨てられる、必要な時だけ呼ばれるハケンのお仕事。
割り切って働いているわりには高い時給をもらっていました。しかし当時のわたしは、もっともっと膨大なエネルギーを何かにぶつけたかった。高いレベルの仕事がしたくて、でもそんな仕事に就けるアテもなくて鬱屈していたんです。
何かにエネルギーを注がないと、感情やパワーのかたまりを体に押し込めておけなくて爆発しそうだった。パンパンにふくらんだ風船みたいに、針一本でパン! と弾けそうな状態でした。そこへ舞い込んだ愛人話。死ぬくらいなら愛人上等、ひとつ満足させてやろうじゃないの。本気でやってやる。そういう気持ちで会いました。
■噛み合わない会話
Iさんとの逢瀬が始まりました。
当時のIさんは小柄でハゲてるのに、滲み出る「ただものじゃない感」がすごかった。サングラスをかけてスーツを着ると、カタギに見えない感じでした。
Iさんはいつも車で移動しており、会うときは必ず車で迎えに来てくれました。待ち合わせ場所に指定されるのが、駅とかじゃなく「○○ホテルの車寄せ」。
そもそも車を所有したことがなかったわたしは、「クルマヨセ」の意味すらわからない。「クルマヨセ」と力なくつぶやいて、想像もつかない「クルマヨセ」という場所を探さなければならなかったのです。
しかしそこは根性。とりあえず「○○ホテル」に行って「クルマヨセって何ですか?」と聞きました。「タクシーや迎えの車を停めておける場所」だと教えてもらいました。その後で「このホテルの車寄せはどこですか?」と聞いてやっと案内してもらって着く。
待ち合わせはいつも、難解なクイズを解いているようでした。「○○ホテルのラウンジ」も難易度高かったですね。ロビーとラウンジの違いがわからなくて、ロビーで待ちぼうけしたこともありました。ラウンジはエレベーターに乗らないと着かないのね。
車の中での会話は、Iさんが常に質問を投げかけて来る形でした。
「ワインは何が好きですか?」と聞かれても「え、白とか赤とか答えればいいんですか?」というレベルで意味がわからない。
「車は好きですか?」と聞かれても「色とか答えればいいんですか?」というレベルで噛み合わない。
「野球は好きですか?」と聞かれてやっと普通の話題だーと思って食いつくと「僕、野球全然わかんないんですよ、ふふふっ」とわけのわからん回答。何この恋愛ゲームにおける無理ゲー感。
■レストランで仲良くなった
それでも、何とか会話をつないで食事に行きました。ある時の食事は、ホテルの中にあるフレンチレストランでした。ドレスコードは聞いていたので、何とかクリア。(スニーカーじゃなければOKくらいのゆるいドレスコードのお店でした)
そして、ここで奇跡が起こります。わたしの父はフレンチのシェフでした。つまり、わたしは偶然にも、フレンチのコースの流れやテーブルマナーを父の教えでよく知っていたのです。味の違いもわかる方でした。これが功を奏し、フレンチレストランでの食事は純粋に「これ美味しいですね!」「付け合せのキノコが美味しい! なんていうキノコですかね?」とか、とにかく盛り上がりました。
ワインはIさんが選んでくれました。グラスでいくつかもらって、わたしの好きなタイプのワインを一緒に飲もう、と気配りしてくれました。当時はまだ胃を壊す前だったので、グラスに2~3杯ワインを飲みました。夫とほろ酔いになって、最高にたのしかった。ボルドーワイン、ということばを覚えました。赤、だけじゃなくてボルドー。
■Iさんの友達に紹介される
Iさんは人付き合いに気負いがなく、人慣れしていました。自分の友達にどんどんわたしを紹介しました。Iさんのお友達はみんな立場のある方ばかりで正直緊張しましたが、中にはあまり緊張せず話せる人もいました。そういう人とまた数人で会ったり、Iさんらしい社交性豊かな日々にわたしも巻き込まれていきました。
ただ、どこへ行ってもわたしの紹介の仕方が微妙。いかにも愛人を紹介している感じでした。深くは聞くな、という含みをもたせた感じ。わたしはその感じがなぜだかとても悲しくなりました。Iさんに対して、あこがれのような、もっと深く付き合いたいような、欲張りな気持ちがあふれて来たのです。
◼︎愛が止まらない
わたしはIさんに対して「愛人じゃなくて普通に付き合ってほしい」という気持ちを抱えたまま、愛人としての階段を登り続けました。おそらく愛人としての及第点をもらえたのか、とうとうホテルに誘われたのです。
盛り上がらない会話でもこちらに合わせようとしてくれる気遣い、どこにいても車で迎えにきてくれる便利さ 優しさ、フレンチレストランで夢を見させてくれる特別感、話すたびに発見のある知的な会話。こんな素敵な人と、愛人として体の関係を持ちたくない、わたしはIさんに気持ちを伝える覚悟を決めました。
ホテルの部屋まで案内されたとき、コトに及ぶ前にわたしから言いました。
「わたしIさんのことが好きです。愛人じゃなくて、結婚前提の恋人になりたい」
Iさんは困った顔をして、
「僕は、あなたと食事をしたり、時々は体の関係も持ったり、したいんだ。そのたびにお小遣いもあげる。あなたが恋人をつくるのも構わない。そういうのは、嫌なの?」
「はい。お金はいらないです。Iさんとしっかり向き合ってみたい」
「困ったなぁ…」
「好きなんです。普通に付き合ってください」
「いやいや…そんな、こんなオッサンと、やめてください」
「本気です。普通の恋人にしてください」
「えええ…」
結局、根負けしたIさんはわたしと正式に付き合うことを承諾してくれました。初夜はギリギリのところで、愛人としてではなく、恋人として結ばれたのです。
その後すぐ、Iさんはわたしのことを周囲に「婚約者」と紹介するようになりました。周囲の人たちの「こいつ…」みたいな白い目が忘れられないですw
ええ、わたしIさんと結婚して、人生変えたかったんです。Iさんとなら、わたしの人生変えられる、そう思ったんです。人生で最大の決断だったと思います。
たぶん、あのとき飛ばなかったら、わたしの人生まだ社長にもなれていなかったし、情報も読み解けなかった。人生の深さを知らないまま、ただ若さを永らえさせて体力勝負の仕事しかできていなかったはずです。わたしは、人生にたった一度訪れた大チャンスをつかもうと足掻いたのです。
ここから少し、起業の話が混ざります。
その後、毎日Iさんに会う生活をしていました。ある日、わたしの勤めていた派遣会社の内部事情により、わたしの所属していた携帯販売事業部がなくなることになりました。
Iさんに「別の派遣会社を探さなきゃ」と話したところ、すごい話になりました。
「あなた、今の派遣会社の人とはわりと仲がいいんだよね」
「? うん」
「みんなこれから、別の派遣会社を探すんだよね?」
「? うん、そうなるよ」
「あなた、起業するなら今だよ」
「えっ」
…これが、わたしが社長になる瞬間でした。あの瞬間は一生の宝物。死ぬ間際に思い出すかもしれない。ぱぁっと目の前に道が拓けて、すべてのものが輝き、燃えさかっているように見えたのです。起業という高揚感は一度味わってみてほしい。世界の色が変わるから。これは本当。
Iさんは、わたしのおかれている状況を、話を聞いただけで瞬時に把握し、あれよあれよとわたしを最短ルートで社長に押し上げました。わたし自身も動いたけど、やっぱりIさんがいたからできたんだと思う。
会社設立までは3ヶ月と決めました。逆算して、わたしは資本金集めに奔走しました。貯金0だったので、昼は携帯ショップ、夜はキャバクラやって大至急で100万円貯めました。忙しい日々の中で、役員になる人と会って話したり、税理士さんと会ったりしました。Iさんがわたしの日常に入ってきた瞬間、わたしの人生はわたしらしい色に彩られ始めたのです。
Iさんいわく、わたしが輝くには社長をやるしかない、と思ったそうです。誰かに使われていては、わたしらしい仕事ができないと。事実そうでした。わたしは社長になって初めて、仕事の意味、働く意味、生きる意味を真剣に考えることができたのです。
無事に法人登記が終わって今度は顧客集め、飛び込み営業、テレアポの日々。
Iさんにその日あったことを話して、Iさんなりのアドバイスをしてくれる、そんな日々がずっと続き、喧嘩したり険悪になったり、いろんな日が過ぎて、やがて季節が一周回った頃、こんなことを言われました。
「あなたのご両親を、安心させてあげたいね」
「えっ、結婚してくれるの? よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
…理由も何もあったもんじゃないし、ロマンも全くない、起業と完全にごっちゃになってしまったわたしと夫の物語。
夫は、わたしの命を輝かせてくれました。今もわたしの命は生きることを喜んでいます。苦しいことや逃げたいこともたくさんあるけれど、命が喜ぶ生き方をしていると、わたし自身思えるのです。
籍は入れずに事実婚にしました。わたしは貫洞であり続けたいから。貫洞として、異端で、ニッチで、自由に生きたいから。わたしと夫は、お互いを縛りあわずに一緒に生きていこうと話しました。
お題に戻って、結婚を決めた理由は「この人といると自由になれるから」です。まだいろんなしがらみにとらわれているけれど、それでも結婚前よりずいぶん自由になりました。生きやすくなりました。
夫はわたしと結婚してから体の不調があり、わたしも胃を壊し、今は老夫婦のように体を寄せ合って暮らしていますが、出会った頃のことを思い出すといつでも二人は恋人の気持ちに戻ります。シャンパンの泡とか、レストランの真っ白なテーブルクロスに赤いワイングラスとか、大きなベッドとか、夢みたいな風景ばかり思い出します。あの思い出があれば、この先どんなことがあっても、わたしの走馬灯は美しい。だから大丈夫なんです。
夫はわたしの宝物です。不器用に地べたを生きて生きて、やっと出会えた幸せの象徴のような存在です。不釣合いだと言われますが、夫とはもう6年、仲良く生きてきました。きっと、釣り合っていなくてもどこかが共鳴したのだと思います。
なんだか、とても長くなってしまいました。
夫と結婚を決めた頃のわたしの写真で今日はお別れしましょう。まだ胃を壊していないから、今より5キロ以上体重がありました。一人前を食べきれたあの頃がなつかしいです。。。健康的じゃのお。。
夫はこの頃のわたしに戻ってほしい、今はガリガリすぎると言います。
今週のお題「結婚を決めた理由」
それじゃあ、また明日!
☆今日の過去記事☆
少しだけ前に書いた記事を集めました。