金子元希
2015年10月5日05時08分
奥西死刑囚の死去に、事件に関する著作があるジャーナリストの江川紹子さんは「冤罪(えんざい)をはらさずに死ねないという強い思いが命を支えていたと思う。どれだけ無念だったか」と話した。2012年、医療刑務所に移ったころに面会。車いすに乗って「がんばります」と答え、拳を大きく上下に振っていたという。
「再審開始決定が05年に出た時点で、裁判をやり直すべきだった。DNA型鑑定が絡む事件以外では、決して再審を開こうとしない日本の裁判所の姿勢は罪深い」と指摘した。
事件当時にNHK津放送局記者で、自白したとされた奥西死刑囚に取材した柳川喜郎さん(82)=元岐阜県御嵩町長=は、「白か黒か詰め切れないまま亡くなり、後味が悪い」と話す。「司法には慎重さが必要だが、スピード感をもって進める必要があるのでは。彼の目を見つめながら何があったか聞いてみたかった」
東海テレビの元カメラマンの門脇康郎さん(71)は、事件を30年以上取材してきた。1988年に84歳で亡くなった奥西死刑囚の母タツノさんは生前、息子の無実を信じ、「勝が出てくるまでは100歳までも生きる」と話していたという。「そのことを本人に伝えたかった」と悔やんだ。
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朝日新聞社会部
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