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高速道路を建設・管理していた旧道路公団が民営化されて、今月で10年にな…
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高速道路を建設・管理していた旧道路公団が民営化されて、今月で10年になった。
民営化時に40兆円近くあった有利子負債は30兆円を切った。サービスエリアにはおしゃれなカフェやフードコートが増え、ホテルやペットと遊べる施設まである。現状を点検した有識者会議の指摘も、ガソリンスタンドの空白地域への対策など今後の課題が中心で、「民営化は成功だった」との認識がにじむ。
しかし、ここ数年で数々の失敗や無責任さが明らかになったことを忘れてはなるまい。
まず、大規模な修繕や改修に要する資金の問題である。
2050年までに負債を完済し、高速道路を無料にする。民営化にはこんな計画が盛り込まれたが、大規模修繕・改修の費用が計算されていなかった。
高度成長期に集中的に整備された高速道路の改修は、首都高速を皮切りに始まったばかりだ。高速各社がはじいた必要額は、現時点で約4兆円。政府は資金確保のために有料期間を65年まで15年間延ばしたが、その場しのぎの対応にすぎない。
中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を引くまでもなく、老朽化対策は最大の課題だ。その費用をどうするか。
民営化とはいえ、高速道路を保有するのは独立行政法人だ。高速各社は独法から道路を借り、賃貸料を払う「上下分離」方式である。民営化を掲げる以上、利用者が支払う料金でまかなうのが筋だと考えるか、上下分離を前提に税金投入の余地を残し続けるのか。いずれ結論を出さねばならない。
本州と淡路島を結ぶ明石海峡大橋や東京湾アクアラインなどに巨費を投じたツケも大きい。
他の路線より著しく高い料金を下げようと税金が投入されてきたが、限界に直面し、他路線の料金収入を充てることになった。「路線ごとに収支管理を徹底する」という民営化の精神に反する解決策である。
料金の割引を巡っては、08年のリーマン・ショック後、政府が高速各社の頭越しに「休日上限1千円」など様々な制度を導入した。しかし、長続きせず、鉄道や船など地域の他の交通機関にも悪影響を与えた。「高速各社の経営判断を尊重する」という民営化の大原則を忘れたための混乱だった。
造った後の維持・更新まで視野に入れて建設の是非を決める。甘い費用対効果の見積もりは厳に慎む。政治的な判断を排除する。高速道路には、公共事業全てに通じる「基本のき」が詰まっている。
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