マクドナルド(ティッカーシンボル:MCD)が10月6日から「オールデイ・ブレックファスト」メニューを導入します。

もっとわかりやすい言い方をすれば、エッグマフィンを午後でも注文できるということです。

およそマクドナルドほどヘイターたちの標的にされている企業もないでしょう。

「マクドナルドはヘルシーじゃない」というイメージに加えて、チキンナゲットの衛生管理に関するソーシャルメディアでのネガティブなBuzzりに対し、会社側の対応が拙かったことも同社のイメージを下げました。

従って足下の売上トレンドは、悪いです。

ただ「それじゃあマクドナルドは、つぶれるほど財務内容が悪いのか?」と言えば、それは明らかに間違っています。

同社の負債は楽勝でやりくりできる範囲内だし、配当も安全だと思います。

下は同社の一株当たりの業績のデータです。

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【略号の説明】
DPS 一株当たり配当
EPS 一株当たり利益
CFPS 一株当たり営業キャッシュフロー
SPS 一株当たり売上高

2014年の営業キャッシュフロー・マージン(6.99÷28.5)は24.5%あります。これはアメリカ企業の中でも立派な数字だし、ハッキリ言えば日本の大企業でこのレベルのキャッシュフローを誇っている会社は、殆ど無いです。

配当のペイアウト・レシオ(3.28÷4.94)は66%です。マクドナルドのような、成熟した大企業で、業績が景気に左右されにくい業種としては、決してキケンなほどペイアウト・レシオが高いとは言えないと思います。

同社の配当利回りは3.4%です。

それでは今回導入される「オールデイ・ブレックファスト」が成功するか? という問題ですが、僕は大成功すると思っています。

これは口の奢っている日本人には、到底、理解不能でしょうね。

およそ国際結婚して何がガックリするかといえば、食生活をめぐる習慣の違いです。うちのワイフは夕飯の時間でも平気で目玉焼きとトーストをいそいそと作ったりするわけです。

(きさまらの、食生活の貧しさは、何だ!)

と、僕が心の中でブチ切れているのを尻目に、妻や息子たちは嬉しそうにベーコンをカリカリ言わせながらかじっているわけです。

それから、こんな事もありました。

あれはちょうど1年ほど前のことですが、下の息子の大学が「ペアレンツ・ウイークエンド」と呼ばれる、オープンハウスをやるというので、ワイフと二人でロスアンゼルスまで行ったのです。

日本では考えられないことですが「ペアレンツ・ウイークエンド」は毎年5,000人くらいの親が参加する、ちょっとしたお祭りの様相を呈しています。だから大学の近くのホテルが取れないのです。

それで仕方なく、サンタモニカの「トラベロッジ」というモーテルに数日間泊まりました。

株をやっている人間の哀しい性として、朝早く目が覚めちゃうという問題があります。でもモーテルのインスタント・コーヒーは飲む気がしないので、おのずと薄暗いサンタモニカの街を、コーヒーショップを探して歩き回るという羽目に陥るわけです。

(しめしめ、マクドナルドがあるぞ)

やっとの思いでマクドナルドを見つけて、コーヒーを注文し、大通りに面した一人掛けの、「止まり木」のような座席に座ろうとすると、後ろから「チョット待った! そこは俺の席だ!」という声がします。それで振り返ると初老のチャイニーズの紳士が、ブレックファスト・セットの載ったトレーを持って、私が席を譲るのを待っています。

私は思わずぐるっとマクドナルドの店内を見回したのですが、この時間、空席は幾らでもあります。

(ま、いいか)

そう思って、その隣の「止まり木」の席に座ろうとすると、今度は「ちょーい待ち。そこは、オレ様の定位置だ」という事がします。振り返るとホームレス風の白人の老人が、コーヒーを握りしめて立っています。

「一体、いつからマクドナルドは座席指定になったのだい?」

僕はそう嫌味を言いました。

「あんた、旅の人じゃろ? 一見さんの客は、四人掛けのボックスシートに行くというのが、ここのしきたりじゃ」

「へえ、そりゃ初耳だ。いつからそんなルールが出来たんだい?」とこちらも喧嘩腰です。

そこで最初のチャイニーズ風の紳士が言いました。

「わしらは、もうかれこれ15年ほど、毎朝、来ておるんじゃよ、このマクドナルドに。ここに居るのは、みんな友達じゃ。毎朝、こうやって止まり木に座って、朝焼けの大通りを眺める」

そして彼はそばにすわっている黒人の老人を指さして言いました。

「こいつはボビーだ。ボビーは釣りが趣味なんだ。毎朝、ここでコーヒーを買って、それからサンタモニカの桟橋に行って釣り糸を垂れる……どの釣り餌屋に、良い餌が入荷しているかとかは、ぜんぶボビーが知っている」

(なるほど、サンタモニカといえばサーフィンだけかと思っていたけれど、釣りのコミュニティというのも存在するのか)

結局、僕は分相応に四人掛けのボックスシートに座り、この常連客たちの「老人会」の飛び入りゲストとして、皆の話に耳を傾けることになったのです。

そこで感じたのは(マクドナルドは、この老人たちの日常生活に完全に組み込まれているな)ということ。

たぶんこの人たちはチキンマクナゲットの事件を知らないでしょうし、仮に知ったところで、別に意に介さず、例の「止まり木」に今朝も陣取って、世界が往来するのを眺めているように思うのです。