麗華は、まるで幼女が排泄するときのような大股開きに抱えあげられていた。
艶やかなピンクに染まった肌を隠すものは何もなく、秘処を隠す毛の一本に至るまで曝け出され、浴室の鏡がその姿を克明に映し出す。
稀代の狩人と呼ばれている彼女が、そんな羞恥の姿勢を取らされているのには理由があった。
すなわち、彼女の中にあるものの排泄である。
「……いいですよ、姉さん」
「う、うんっ……」
晴利の言葉を聞いて、麗華が眉をしかめ、身体を緊張させる。
ぷしゅっ。
微かな空気の音を立てて、彼女の尿道が口を開いた。
そして、その音に続いて、毒々しいピンクに色づいた粘液がそこからあふれ出してくる。
「あ、ああ、あああああああっ……!」
液体というにはあまりにも濃密なそれが、麗華の胎内から押し出されるかのようににじみ出てくる。
このままじゃ拙い。それは、おそらく晴利ならずとも、誰にでも判ることだろう。
「姉さん、頑張って……全部出すんです」
「あ……ああっ……ん……うんっ……」
目の端に涙の玉を浮かべ、全身から汗を吹き出させて頷くと、麗華はもう一度下腹部に力を入れる。
尿道から排泄された粘液が彼女自身の膣口を通り過ぎ、肛門の辺りに集まってから、ぽた、ぽたと床に零れ落ちていく。
「ああっ……で、出るっ……」
ぷしゃあっ……。
ようやく、液体と呼べるものが溢れ出る。
しかし、その色はあまりにも毒々しいショッキングピンク。
あらゆる意味で、正常な排泄行為とはかけ離れたものだった。
「あああああっ……ま、またっ、またイクっ……」
ビクン。
これで何度目か数えることすら困難な程の回数、麗華は続けざまの絶頂に晒されつづけていた。
その度に放尿、そして水分の補給。
そのまま卵を取り去るのが困難ならば、まずその媚薬を取り去ろう。
それが晴利の下した判断だった。
そして、そのために、三日三晩に渡って麗華は絶頂を極めさせられつづけてきていたのだった。
「あ、あ、あああああああぁぁぁぁーーー……」
長く尾を引く絶叫をあげ、全身を強ばらせながら、麗華はそのピンクの液体を排出する。
水よりもかなり粘性の高いその液体が彼女の入り口を通り抜けるたびに、麗華の身体は絶頂の炎に燃え焦がされていく。
もっとも敏感な箇所を、もっとも邪悪な液体が刺激していくのだから無理もない。
「はぁっ……はぁっ……あ……ああ……」
ようやくその液体を絞り出し終え、麗華は荒い息をつく。
普段なら、そして常人なら、堪えられるはずもない牝の匂い。
天使でさえも誘惑できるほどの濃密な匂いの中で、麗華と晴利は戦いつづけていた。
自らの胎内に刻みつけられた、屈辱の液体を排泄すること。
それそのものが、今の麗華にとっては至上の快感になってしまっていた。
晴利は、絶え間ない排泄の間もがくがくと身体を痙攣させながら口の端から涎を零す姉の姿を見て、自分の判断が正しかったといえるのかどうか悩んでいた。
「はぁ……あ……はぁ……」
ようやく息が落ち着いてきたのを見て、晴利は麗華の身体を床に立たせる。
まだ腰が落ち着かないのだろう、麗華は晴利の肩に手をかけ、何とか身体を支えていた。
「……だい……じょう、ぶ、よ……」
「姉さん……」
「大丈夫……絶対、負けないから……もう……」
強い意志の感じられる口調でそう断言し、麗華は再び水の入ったペットボトルに手を伸ばす。
絶頂の汗と排泄物とで、体内の水分はいくら補充してもしたりないほどに失われていた。
「んっ……ごくっ……ごくっ……」
全裸でペットボトルにむさぼりつき、喉を鳴らし、1リットル以上の水を一息に飲み込んでいく麗華。
ある種、滑稽ともいえるその姿は、しかし、凄惨な美しさに満たされていた。
「晴利。お願い」
「はい。……前回よりは、今の方が色が薄くなっています。もう少しです」
「……そうね……」
体の中に流れる液体全てがこの毒液なのではないかと思えるほどに濃密だった粘液が、ようやく流れる程度に薄まってきていた。
あと……せいぜい2、3回で、排泄しきれるに違いない。
そんな希望を感じながら、晴利は姉の華奢な身体を持ち上げ、鏡の前に立つ。
肉色の入り口が微かに口を開き、ひくひくと痙攣していた。
「あ……ああっ、で、出るっ……」
ぷしゃああっ。
麗華の股間からほとばしった液体は、まだ微かに桃色がかってはいたものの、ほぼ透明と言っていいものだった。
少なくとも、この方法で排泄できる範囲の媚薬は排泄しきったと言っていいだろう。
「……はあ……あ……」
悦楽ではなく安堵の吐息。
悦楽ではなく安堵の涙が、麗華から零れて落ちる。
「姉さん、大丈夫ですか?」
「……ん、どうにか、ね」
晴利が麗華の脚を下ろすと、麗華は自分の脚で浴室の床に立った。
何日かぶりの、冷ややかな感触。
今までなら同時にざわめきを呼び覚ましていたであろう感触が、今回は純粋な冷たさだけを伝えていた。
「ん……大丈夫みたい、ね」
麗華はそう呟くと、シャワーのノズルを手に取り、蛇口を捻る。
それを見て、晴利はきょとんとした表情を浮かべた。
「姉さん? 掃除なら、私が」
「床も流したいけど、それよりシャワーを浴びたいのよ……汗だくだもの」
「そうですか」
「解ったら、外に出るっ!」
「はいはい」
いつもの口調を取り戻した姉に安堵しながら、晴利は浴室を出、外で立ち番を始める。
浴室の中では、床に溜まった液体を流すのもそこそこに、麗華が自身の身体に湯を浴びせかけた。
「ふぅ……っ……」
スポンジにソープを取り、汗ばんだ身体にそっと触れさせる。
その刺激が性感に転化しないのを確認してから、スポンジを泡立て、ぬめる汗を洗い流していく。
「ん……」
幾日かぶりの、温かなシャワー。
いや、シャワー自体は毎日浴びていた。
しかし、あのガード下での一戦からこちら、それは穏やかな心地よさではなく、理性を責めさいなむどす黒い悦楽しか与えてくれてはいなかった。
だけど、今日は違う。
身体が異常をきたす前と同じように、シャワーのお湯が穏やかな心地よさをもたらしてくれていた。
細かく泡立てたシャンプーで長い髪を清め、絡みついた粘液を丁寧に洗い流す。
スポンジで隅々まで身体を擦り、そして、お湯で泡と汚れを一度に流し去っていく。
「よしっ」
三度か四度も身体を洗い、毛穴に残った粘液さえも許さない勢いで身体を清めた後、麗華は冷たい水を頭から被って心身を引き締め、両手の指を絡めて印を結んだ。
これは略式の禊の一種。
ある程度以上の妖を相手にしてはそれほどの効果は見込めないにせよ、ないよりはましだ。
「疾っ!」
広くはない浴室に、麗華の裂帛の気合いの篭った声が響く。
その声を聞いて、浴室の外から晴利の声が返ってくる。
「姉さん、お風呂壊さないでくださいよ」
「わかってるわよ」
「それならいいんですけど。大丈夫みたいですし、ご飯の支度でもしておきますね」
「ん、よろしく」
その会話を終えて、晴利の足音が遠ざかっていく。
麗華は浴室を出て、タオルで髪と身体の水分をふき取り、何日かぶりの下着を身につけた。
「……ふぅ……」
理由もなく、安堵のため息が漏れる。
いや、理由ははっきりしている。この下着が、自分の理性の象徴のようなものだ。
もっとも敏感なところに直接触れるがゆえに、今までは着けるに着けられなかった。
無理に着けてみたときには、その下着の感触だけで絶頂に追いやられてしまっていた。
それが、今はそうではない。
ただそれだけのことが、麗華に安堵のため息をつかせていた。
「姉さん、卵はどうします?」
「ターンオーバーで、半熟で!」
「いつものですね」
帰ってきた日常のありがたみを感じながら、麗華はスーツに身を固め、ダイニングに向かった。
そして、遅い昼食を終え、二人は事務所に戻る。
客のこない探偵事務所ほど暇なところはない。
まあ、忙しすぎるよりも暇なほうがいい稼業なのは間違いないけれども。
「……しっかし、暇ねぇ」
「宣伝でも打たないと、やってることも知られてないんじゃないですか?」
「ん……そうなんだけど」
事務仕事などは麗華にはまったく不向きである。
やらせたらその分だけ仕事が増えると言ってもいい。
それをよくわかっている晴利は、愚痴も言わずに黙々と資料を片づけていく。
しかし、そんな日常を長く続けていられる状況でないことは二人とも理解していた。
晴利は解っていた。
日常生活を続けている間に、恐らく起こるであろう出来事を。
麗華は感じとっていた。
自分の中で、再び起こりつつある異変を。
「っ……」
麗華の口から、痛苦の呻きが漏れた。
整った顔を歪め、椅子に座ったままで身体を庇うように背中を丸め、手を腹部に宛う。
「姉さん!」
「ぐっ……はっ、はっ……」
麗華の唇を割って零れてくる荒く浅い息が、彼女を襲う激痛を物語っていた。
身体の中を錆びたナイフでかき回されるような、強烈過ぎる痛み。
恐らく、エサを失った傀儡蟲が暴れているのだろう。
「ぅぁああああっ……っああっ」
「くっ……おとなしく餓死してくれるかと思ったのですが」
資料を見たところで、傀儡蟲から逃れた母胎の記録など一つたりとも見当たらなかった。
晴利の推測では、可能性は二つあった。
一つは、そのまま餓死するというもの。
そして、より可能性の高い可能性は、新たな母胎を求めて飛び立つというもの。
どうやら、その後者、より悲観的な予測のほうが的中してしまったようだった。
椅子を蹴って立ち上がり、苦しむ姉に駆け寄ろうとする晴利に、麗華は毅然とした視線を向ける。
「晴利っ……手を出さないで……」
「し、しかし姉さん!」
「私は、城見の家の娘よ……これぐらい、一人で……」
額に脂汗を浮かべながら椅子から立ち上がり、麗華は愛用の杖を手に取る。
その先端に、鱗粉のような細かな光の粒子が集まり、くるくると小さなつむじ風のように回り始める。
「姉さん、何を……」
「かけまくもかしこき……」
麗華の唇から祝詞が紡ぎだされ、それを受けて杖の先端の光が次第に強く、濃くなっていく。
脚を肩幅に広げ、まるで剣のようにその杖を構えながら、ただ小さな声で祝詞を紡ぎつづける。
「かしこみかしこみもうす……っ!」
麗華が最後の一句まで唱え終えると、杖は眩しいほどの煌めきを纏っていた。
力を帯びた杖を振り下ろし、麗華はそれを自身の秘処に突き刺す。
「あああああっ!!」
「ね、姉さん!?」
麗華の最奥で放たれ、彼女の体内を通り抜けた光が外にあふれ出してくる。
身体中の穴という穴から、光の微粒子が漂い出てくる。
それはほんの数秒の出来事、しかし、彼女自身を浄化するには充分過ぎるほどの時間だった。
「あ、あ、あ……ああ……っ……」
力が抜け、床に崩れ落ちそうになる身体を、麗華は自分の手を机について押し止める。
一瞬後に、カラン、と乾いた音を立てて麗華の杖が床に落ちた。
「はぁ……はぁ……」
「姉さん、大丈夫……」
「ちょっと……キツかった」
珍しく素直にそう答えると、麗華は机に手を突いたまま、尻を突き出すような姿勢を取る。
濃いピンクに濁った液体が秘裂から溢れ出、麗華の太股を汚した。
「晴利、浄化して」
「はい、姉さん」
麗華の呼びかけに答え、晴利は手早く準備をして彼女の後ろに立つ。
ひくひくと痙攣する秘裂は、彼女の理性が限界を迎えつつあることを物語っていた。
「行きますよ」
短く告げると、晴利は呪を編みながら姉の秘裂に自身のペニスを突き込んでいく。
奥深くまで、一滴も残さずに掻き出そうとするかのように、激しく腰を打ちつけていく。
「あああっ、ああっ、あああっ」
「さきみたま……くしみたま……」
祝詞のリズムに合わせて腰を動かしているのか、腰を動かすリズムに合わせて祝詞を刻んでいるのか。
いずれにせよ、晴利のペニスが麗華の中をえぐるたびに、麗華の熱病のような興奮は静まっていく。
代わって、安堵感にも似た、静かな高揚感が彼女の心身を押し包んでくる。
「ああっ……晴利っ……」
「さきはえたまえっ……!」
どくん。
晴利の脈動が麗華の奥底を打つと同時に、麗華の股間からショッキングピンクの液体がほとばしる。
しかし、その液体は、放尿の終わる頃には透明に変わっていた。
どうやら、傀儡蟲の持つ毒素を作る能力は、成体になるまではそれほどでもないのだろう。
そういう意味では、今回の処方は正しかったようだ。
そんなことを考えながら、晴利は、机に手を突いたまま荒い息をつく姉を見下ろしていた。
「……あーあ、またシャワー浴びないと」
気分を変えようとしたのだろう、麗華はおどけた調子でそう言ってくる。
いちいち口にしなくても、本人はよくわかっているのだろう。
次はこっちから仕掛ける番だ、ということも含めて。
そうなると、晴利のすることは一つしかない。
「まったくですね」
姉が暴走しないように制御しながら、こうして付き従うことだけだ。
そんなことを思いながら、晴利は苦笑混じりに答えるのだった。
to be continued...
mailto:三波 雄
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