アップルがアプリのジャーナリズムを削除する
コメントする10/03/2015 by kaztaira
ジャーナリズムは、配信の手段をグーグル、フェイスブック、アップルなどのデジタルプラットフォームに依存するようになっている。
それによって、億単位のユーザーに手が届く一方で、配信の可否をプラットフォーム側に握られることの危険性も、常に意識しておく必要がある。
そんな最新の実例を、アップルが提供している。
米国によるドローンの攻撃事例のニュースを配信するiOS用のアプリを、アップルが突然削除したのだという。
アプリによるジャーナリズムの配信経路が、一つ閉ざされたようだ。
●ドローン攻撃をウオッチする
アプリをつくったのは、調査報道メディア「インターセプト」のリサーチエディター、ジョシュ・ベグリーさん。
「インターセプト」は、イーベイ創業者のピエール・オミーディアさんがつくった「ファースト・ルック・メディア」傘下で、ピュリツァー賞を受賞したスノーデン事件のスクープで知られるグレン・グリーンワルドさん(元英ガーディアン・コラムニスト)らが創設したネットメディアだ。
ワイアードやニューヨーク・タイムズなどによると、ベグリーさんはニューヨーク大学の院生時代の2012年、英調査報道NPO「調査報道局(BIJ)」が公開しているパキスタン、イエメン、ソマリアでの米国のドローンによる攻撃の情報をプッシュ型で配信するアイフォーン用のアプリ「ドローンズ+」を作成した。
BIJが公開していたデータはだれでも入手可能になっており、当時、ガーディアンのデータジャーナリズムを先導していたサイモン・ロジャーズさん(現グーグル・データエディター)も、これをもとに、グーグルマップでのビジュアル化地図を公開。アイフォーン上で今でも閲覧できる。
●5度の拒否、承認、そして削除
ところがアップルは、ベグリーさんのアプリ申請に対して、「極めて品位に欠け、不快なコンテンツ」と拒否。申請と拒否の繰り返しは5度に及んだという。
しかし、ベグリーさんはアプリの名前を「メタデータ+」と変えて改めて申請したところ、昨年2月に承認されたという。
ところが米ゴーカーやガーディアンなどの報道によると、今年9月末に、アップルが突然、「メタデータ+」をストアから削除したという。理由は、再び「極めて品位に欠け、不快なコンテンツ」。
ベグリーさんは、同種の機能を持つ「エフェメラル+」というアプリも申請の承認を受けていたが、「メタデータ+」の削除からほどなくして、やはり削除されてしまったようだ。
アップルはこれまでも、北朝鮮やシリアなどの時事問題を扱ったゲームを削除し、議論を呼んできた経緯がある。
●プラットフォームの〝編集権〟
「メタデータ+」は、紛れもなくアプリのスタイルを取ったデータジャーナリズムの表現方法だ。
ただ、そのジャーナリズムの採否を決めるのが、プラットフォームとしてのアップルだ。しかも、その採否の基準や理由がつまびらかにされることはない。
ジャーナリズムがプラットフォームに依存する危険が、ここにある。
フォーチュンのマシュー・イングラムさんは、同様の危険は巨大プラットフォームのフェイスブックやツイッターにもある、と指摘する。
プラットフォーム側は「不適切」との理由で、コンテンツをいつでも削除できる、いわば〝編集権〟を握っている。
ジャーナリズムは、権力の検閲から自由でなければならない。だが今や、それに加えてプラットフォームの〝検閲〟からの自由も確保しておく必要に迫られている。
フェイスブックやツイッターを配信の主体とする「分散ジャーナリズム」も、程度問題である。
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※このブログは「ハフィントン・ポスト」にも転載されています。
Twitter:@kaztaira