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 2011年の東日本大震災で流失し、米国オレゴン州に流れ着いた2基の鳥居の一部が2日、約7千キロの旅を経て、奉納されていた青森県八戸市鮫町に「帰郷」した。地元の関係者は「返ってくるとは思ってもいなかった」と約4年7カ月ぶりの再会を喜んだ。

 帰郷したのは、同町の大久喜漁港内にある厳島神社に奉納されていた鳥居の一部の笠木。1基は長さ4・2メートル、もう1基は4・7メートル。いずれも近くに住む高橋利巳(としみ)さん(86)と、高橋政典さん(67)の父・故金次郎さんが奉納したものだった。

 同州から船で9月半ばに横浜港まで運搬され、この日午後、漁港のそばの大久喜浜小屋前に運び込まれた。待ち受けた利巳さんは「見た瞬間に自分が奉納したものだと分かった。ただありがたいという思いです」、政典さんも「父が生きていたら言葉もないほど喜んだろう」と話した。利巳さんの依頼で鳥居を制作した岩手県洋野町(ひろのちょう)の大工竹駒末太郎さん(71)も駆けつけ、「自分の子供に再会したよう」と喜んだ。

 2基の鳥居は震災による流失から2年後の13年3月と4月に同州の海岸に相次いで漂着した。同州ポートランド市在住でポートランド日本庭園文化・技術主監の内山貞文さん(60)が鳥居に刻まれた名前などを手がかりに、日米の橋渡し役となって2人を探し当てた。運搬には現地の木材業者が協力を買って出るなど支援の輪も広がった。

 運搬作業に同行した内山さんは無事に返還できたことに「漂着から2年半。この日のためにやってきた。多くの人に支えられました」と目を潤ませた。作業の合間には近くの大久喜小学校の児童たちが見学に訪れ、「アメリカから来たんだ」と驚いたり、感心したりしながら眺めていた。

 地元では返還を記念し、3、4日に浜小屋前で一般公開する。2基の鳥居は笠木をそのまま生かして竹駒さんの手で修復され、来年の桜の時期に合わせて元の場所に建てられる予定という。(志田修二)