松浦新
2015年10月4日05時03分
東京都足立区内の郵便局をよく利用していた一人暮らしの女性(88)の様子が変わったのは2年ほど前。ひんぱんに郵便局に来ては「通帳がなくなった」と言う。しだいに毎日のように来て「通帳を盗まれた」と訴えるようにもなった。
郵便局の職員は認知症を疑い、地域で高齢者の相談窓口になっている「地域包括支援センター」に連絡。親族を探してもらった。
これを機に女性は、認知症の人たちが共同生活する「グループホーム」に入り、財産を管理する成年後見人の司法書士もついた。今年6月には、利用料が安い特別養護老人ホームに移った。区内の女性の自宅は売却し、今後の資金面の不安もなくなった。
司法書士は「郵便局に認知症のことをわかっている職員がいて、包括支援センターに連絡できる体制があったので見つけてもらえた」と話す。
足立区には、こうした「地域の気づき」を包括支援センターを通じた支援につなげる仕組みがある。郵便局や商店街、銭湯など約540団体・事業所が協力して高齢者を見守る「絆の安心ネットワーク」だ。
その原点は区が2008年から取り組む「自殺防止対策」だ。悩みがありそうな人が区のどの窓口に来ても相談につなぐなどの対策で、年間の自殺者数はこの5年で約2割減った。これを発展させた高齢者向けの「孤立ゼロプロジェクト」が12年度から始まった。
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朝日新聞社会部
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