国立競技場の建て替えに続いて、東京五輪・パラリンピックの大会エンブレムを作り直す作業が急ピッチで始まった。

 大会組織委員会は、美術関係の専門家に、スポーツ界や学界の人材も加えて「エンブレム委員会」を立ち上げた。来春のお披露目をめざし、今月中旬までに年齢や資格など公募の要件、審査方法などを決める。

 委員会の新設に伴い、組織委は旧デザイン撤回に至る経緯の検証をまとめた。業務運営と管理監督が不十分だったとして、武藤敏郎事務総長と2人の副事務総長が報酬の一部を自主返納することを決めた。

 第三者ではなく、組織内でまとめた検証報告だが、その内容だけでも、組織委のずさんさと無責任さにあきれかえる。透明性に欠ける組織委の体質そのものを変えなければ、同様の問題がまた起きかねないという懸念を抱かざるを得ない。

 報告は、応募要件、審査委員の選任、審査方法、原案の修正と、あらゆる段階で問題があったと全面的に非を認めている。

 冒頭では、「なにを訴えるものかなど基本的なコンセプトを詰め切れず、2020年にふさわしいエンブレムはどのようなものかを示さなかった」と指摘している。根本的な出発点も整理できていなかったのだから、白紙撤回に陥ったのは必然だったのだろう。

 そもそもこの検証報告自体も十分なものとは言い難い。

 組織委の一部幹部の独断でエンブレムの原案を2度にわたり修正した経緯について、詳細な説明はない。国際コンペを経た公の審査で決められたものが、密室でどんなやりとりの末に修正されていったか、今に至るも明らかにされていない。

 この検証が報告された組織委の理事会では、森喜朗会長ら幹部の責任を問う声は上がらなかったという。迷走を続けた競技場の問題も含め、組織内で当然あるべき責任論議すら浮上しないというのでは、とても健全な組織とはいえまい。

 新たにできたエンブレム委員会では、「応募、審査に多くの人が関わる形を考えたい」(宮田亮平委員長)と、開かれた手続きを強調している。

 しかし、いくら委員会のあり方を変えてみても、肝心の司令塔である組織委自体の抜本改革がなければ、国民の理解など得られるはずもない。

 今からでも改めて第三者による検証を尽くす必要がある。責任の所在を明確にしたうえで、失敗を繰り返さないための組織の刷新を真剣に考えるべきだ。