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永元千尋の右往左往な文筆業生活

大袈裟に言えばレゾンデートル

文筆業関連 雑記

 昨晩えらい長々とブログを書いてたんですが、どうもしっくりこなくて下書き保存。一眠りしてから朝になって見直してみたら読み物としてまったく面白くなかった上に誰の役にも立ちそうになかったため全ボツにしました。
 簡単に説明すると「今のライトノベル業界は出版における理不尽のもっとも先鋭化したもの」という某氏の発言をキーワードに、ラノベの何が理不尽か、そして自分はなぜラノベを書くのか、いやそもそも俺が書いているのは本当にラノベだったのか……てな話だったんですけど。

 現状、出版社および商業出版と無関係な自分が、出版社および商業出版の最たるものであるラノベについていくら語ってみたところで、何の意味もないのではないかしらん?

 と、ハタと気付いてしまったので、公開する意味はまったくないな、と。

 これは極論ですけど、J・R・R・トールキンジュール・ヴェルヌの原稿が現時点でまだ世に出ていなかったとして、これをラノベ系文庫がアニメマンガチックな表紙と挿絵をつけて売り出せば〔ライトノベル〕になってしまうわけです。ライトノベルってそのくらい、定義も実体も極めてあやふやで、何の意味もないカテゴリワードなんですよ。そもそも論として。
 それでも何とか定義づけをしようとすると、ラノベレーベルから出た作品がラノベである、とか、あなたがラノベと感じたものがラノベである、とか、なんだか禅問答か哲学論争でもしてるような話に踏み込まざるを得ない。これを「カテゴリ」と呼んでいいのかどうかすら果てしなく謎です。そのくせ作家も編集も読者も誰も彼もが「これはラノベっぽい、こっちはラノベっぽくない」とか平気で言っちゃうんですよね。同じ言葉を使っていてもその意味するところは人によって全然違うって、みんな知っているにもかかわらず。
 この一事をもってしても、おそろしいほどに不条理のカタマリなんです。

 で、よくよく考えてみたら、70年代の半ばに生まれた自分は「ライトノベル作家になりたい!」と思ったことが実は一度もなくてライトノベル成立に至る歴史的な経緯を紐解くと、そのカテゴリワードが成立した頃にはもう僕は成人していたことになる。ギリギリのところで「アニメ・マンガチックな冒険活劇小説が大好きで、そういうものを自分も書きたいと思って筆をとりました」って感じにしかならない。思春期頃に出会って多大な影響を受けた作家さんたちもみんな「小説にライトもヘビーもない、あるのは面白いか面白くないかだけだ」っていうスタンスで、自分もこの意見に大いに賛同していたことをふと思い出したわけで……。

 

 上記まとめると。
 僕が描いた作品群がもしライトノベルであると言われるとしたら、

 「お前がそう思うならそうなんだろう、お前の中ではな」

 ということにしかならず、これまで僕は僕以外の第三者が作り出すモヤッとした空気になんとなく乗っかっていた、という程度の意味しかないのです。
 これはたいへん面白くない。世間と他人から勝手に枠を填められてたってことですもんね。
 現に最新の自著〔コヲロコヲロ〕は、間違いなくラノベのプロであり専門家であるところの担当編集氏によって「これはラノベではありません、ラノベとして売り出すわけにはいきません」とお墨付きをいただいた結果として電子書籍によるセルフパブリッシングを選択したわけなので、僕は今日から堂々と「ただの活劇作家」を名乗ると同時に「あ、うちの作品、ラノベじゃないんで」と言ってもいいんだよなと。だから父と子の絆とか平気でテーマにしちゃうし、ナマっぽい女の情念も描写するし、ラノベなんてどうせジャンクフードみたいなもんだから低俗でいいんだよと開き直る必要もなく、よりどりみどりの美少女動物園でございます股間をおっきさせて楽しんでいってくださいね、なんて言う必要もないわけですよ。
 ああ、すばらしい、この世は何て自由なんだ!

 全ボツにしたこと、全部語っちゃった。

 文章量自体はボツにしたヤツと比較して半分くらいに圧縮できたんで、良しとしておきます。

 

 とは言え、ライトノベルを読んでライトノベル作家に憧れて筆をとった方も多数いらっしゃるし、現役の作家さんにもライトノベルを書くことに大変な誇りをもっていらっしゃる方は間違いなく存在します。僕はそれらを否定しようという気は毛頭ありません。文脈としてはそういう形になっちゃってるけど、だいたい僕はラノベ作家に加われず一般小説にも行けずドロップアウトした書き手です。そんなヤツの戯言など、どうか存分に蔑んで見下してツバの一つも吐きかけていただきたい。
 それに、客観的に考えたら、こんな世迷い言をのたまう僕ですら「典型的なラノベ作家」と言われてしまう可能性がある。大声張り上げて宣言しても何の意味もないから黙ってるだけで、自分の書いてるものはライトじゃないって自負してる書き手は少なくないと思いますしね。
 つーかですね、今後執筆する自著をストアに出そうとしたら、けっきょくのところ「ライトノベル」というカテゴリーに追加せざるを得ないんです。世間がそういう風に認識して実際に商売が回っているという重さですよね。そこで肩肘張っても何の意味もない。疲れるだけだし時間の無駄。

 

 ただ、僕個人の内面的な問題なんです。
 自分はラノベ作家じゃなかったんだ、ラノベ作家でなくてもいいんだ、と思い至った途端、とても自由になれた気がした。だから、今度から恐れずそう公言しよう、と。
 そういう時代に生まれて、そういう風に歩いてきちゃったんだから、しゃあねえやな、と。

 

 んで、今日の記事のタイトルに繋がります。

 ここだけは全ボツ記事にした記事の名残でそのまま残していたんですが……いやあ、タイトルって恐ろしいですね。気が付いたらそういう話を全力で展開してしまっていました。
 本当は。膨大な参考写真と共にガンプラの製作記録でも振り返ろうか、って思ってたんですが、それはまた今度の機会に。