【ニューデリー=黒沼勇史】アフガニスタン北部の都市クンドゥズで反政府武装勢力タリバンの掃討作戦を続ける米軍は3日、非政府組織(NGO)「国境なき医師団」の病院を誤爆した可能性があると公表した。同医師団は少なくとも医師ら19人が死亡したとしており、米国にも「病院の正確な位置を常に知らせていた」などと米軍を非難する声明を出した。
アフガンのガニ大統領は3日夜に声明を出し、米主導の「北大西洋条約機構(NATO)軍の司令官が電話を寄越し、事件(医師団病院への誤爆)について謝罪した」と明らかにした。現地の米軍報道官もタリバンを狙った3日未明の空爆を認め「事件は調査中」とする声明を出していた。9月28日にタリバンがほぼ全域を支配下においたクンドゥズを奪還するため、米軍は同29日に空爆を始めていた。
誤爆時、病院内にはアフガン国内外出身の医師らスタッフが80人、患者らが105人おり、死傷者数はさらに膨らむ可能性がある。
同医師団は3日の声明で「ワシントンとカブールの両国の軍関係者に(誤爆を)最初に知らせてから30分以上も空爆が続いた」とも非難した。米軍内部で何が起きたのか早期の説明を求める構えだ。病院の位置は全地球測位システム(GPS)でも随時捕捉可能な状態だったという。
タリバンも同日声明を出し「我々のムジャヒディン(イスラム聖戦士)は1人もその病院にいなかった」と表明した。その上で「この蛮行は侵略者(米国)の偽善と冷酷さをアフガン内外に改めて示した」と強調した。アフガンや隣国パキスタンではこれまでも、米軍の誤爆で市民ら多数の犠牲者が出ている。タリバンは今回の誤爆についても国内の反米感情を高めるのに利用しそうだ。
米主導のNATO軍は2014年末に戦闘任務を終了。15年年初からは政府軍を訓練・指導する非戦闘要員のみが駐留し、治安維持は政府軍が担う態勢だった。ただ昨年の大統領選後の混乱が長引き、選挙で争ったガニ大統領とアブドラ行政長官の2陣営は今も対立する。政府軍も統率が取れていないもようだ。
政治空白を突くようにタリバンは今春から攻勢をかけた。クンドゥズは同名の州の州都だが、01年のタリバン政権崩壊後で州都がタリバンに掌握されたのは初めて。国際戦闘部隊の必要性が改めて認識されつつあっただけに、今回の米軍の誤爆は事態を複雑化し、タリバンの勢力拡大につながる恐れが高まっている。
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