司法試験漏えい:短答式もほぼ満点 教授の専門、憲法分野
毎日新聞 2015年09月09日 15時00分(最終更新 09月09日 18時32分)
司法試験の考査委員だった明治大法科大学院の青柳幸一教授(67)が、受験生に論文式の試験問題を漏えいしたとして告発された国家公務員法違反事件で、教授が問題作成を担当した憲法分野の試験では、この受験生の答案が、短答式でもほぼ満点だったことが関係者への取材で分かった。東京地検特捜部は9日、告発容疑を裏付けるため同法科大学院の教授の研究室を家宅捜索した。短答式でも不正がなかったか調べている模様だ。【石山絵歩、近松仁太郎】
司法試験は、マークシート式で解答する短答式試験と、記述式の論文式試験があり、受験生は両方の試験を解答する。短答式試験の合格基準をクリアした受験生だけが、論文試験の採点対象となる。憲法は短答式、論文式いずれの試験でも出題され、全体に占めるウエートが比較的高い。
法務省などによると、青柳教授は今年の司法試験で、明治大法科大学院を修了した教え子の20代の女性受験生に、自ら作成した憲法分野の論文式試験の問題を漏らした上、解答となる論文の書き方も細かく指導していた。法務省の調査に2人とも、こうした事実関係を認めているという。
関係者によると、受験生の論文は他の受験生に比べ突出して完成度が高く、満点に近かったが、これに加えて短答式試験でも、憲法だけがほぼ満点だったという。受験生は総合点で短答式の合格基準をクリアしていた。青柳教授は複数いる考査委員の中で憲法の問題の取りまとめ役で、短答式の試験問題作成にも携わっていた。
今回の不正は、受験生の論文の完成度の高さに疑問を持った他の考査委員が「情報提供がなくては作成困難な答案だ」と法務省司法試験委員会に情報提供して発覚した。
考査委員は司法試験の問題作成や採点を担当する非常勤の国家公務員。法務省は、8日付で青柳教授を考査委員から解任し、国家公務員法(守秘義務)違反容疑で東京地検に告発した。今年の司法試験の結果は8日に発表されたが、法務省は受験生についても採点対象から除外する処分をしていた。
特捜部は教授の自宅も既に家宅捜索し、関係者から事情を聴くなど立件に向けて捜査を進めている。