川島なお美さん「胆管がん」死去で考える50代の「がん予防」

2015年10月3日12時3分  スポーツ報知
  • 川島なお美さん

 先月24日に胆管がんのため死去した女優・川島なお美さん(享年54)の葬儀が2日、都内で行われた。50代前半での死は世間に衝撃を与えたが、この年代はがんに罹患(りかん)する割合が一気に上昇する世代でもある。もし、がんが発見された時には、どのように病気と向き合っていけばいいのか、また、何より、がんを予防するためにはどうすればいいのか。国立がん研究センターの中央病院相談支援センター長・加藤雅志氏に聞いた。(高柳 哲人)

 川島さんの死が報じられた時に、「早過ぎる」という言葉が使われた。だが、がんは決して「年寄りの病気」ではない。

 2011年の調査によると、10万人あたりのがん罹患者数は45~49歳では315・7人だったのが、50~54歳は446・4人、55~59歳では685・1人と、50代に入ると加速度的に増加していく。女性は、若い世代で乳がんや子宮がんを発症する率が高いため上昇カーブは緩やかだが、男性では特にその傾向が顕著だ。

 高齢化が進んだ現在では、50代は、まだ働き盛り。その世代でがんにかかった時に気をつけなければならないのは「自分で何でも決めないこと」と指摘する。

 「がんになったことが分かると『治療に専念しよう』と思うのか、すぐに仕事を辞めてしまう人がいる。でも、それは間違い。充実した生活、やりがいをなくすのは体にも良くない。何より、経済的にも大変ですから」。現在は、治療を進めながら仕事をする環境が整いつつある企業も増えてきているという。

 以前とは異なり、医療の発達によってがんは全般的に見れば“治る病気”となってきている。川島さんの胆管がんは、調査が始まった1960年と2013年の50~54歳の10万人あたり死亡者数はほぼ変わらず、生存率の低いがんであることに変わりはないが、全部位での死亡者数は、209・4人から107・5人に半減しているのだ。

 50代の患者からの相談で「多いのは仕事のことと、『子供など、家族にどう伝えればいいか』ですね」。その際には、基本的には「うそをつかないほうがいい」とアドバイスを送るという。「家族に変化があれば気付くもの。『隠し事をしているんじゃ』と思われて、関係がおかしくなるのが一番良くない。がんを告白したことで『中学生の子供が家のことを手伝ってくれるようになった』と喜んでいた患者さんもいました」

 何より重要なのは「がんにかからないこと」だろう。「(罹患の)リスクを減らすためには、間違いなくたばこはやめた方がいいですね」と断言した。

 がん研究センターが発行する冊子によると、日本人におけるがんの要因で、喫煙は男性で1位、女性で2位。男性の約3割のがんは、喫煙が原因となっている。また、「日本人のためのがん予防法」として掲げる「5つの健康習慣」にも「禁煙」が第1に挙げられている(他の4つは節酒、食生活の改善、身体活動、適正体重の維持)。

 一見、「たばこは肺がんを防ぐだけなのでは」とも思えるが、「たばこの煙が肺に影響を与えるのは確かですが、それだけでなく、全体的にがんのリスクが増えます」とする。がんを発症する原因は、遺伝子に傷が付くことで変化が起こり、がん細胞ができるため。たばこはその傷を作りやすくするものだという。

 そして、もう一つは検診をきっちり受けること。禁煙もそうだが、「そんなの分かってるよ」という人が多いだろう。「でも、それが現在できていない。日本は医療が充実しているからか、過度な信頼を持っているように思います。『病気になってから治すのを考えればいいや』と。他の病気はそれでいいと思いますが、がんはいったん症状が出たら根治できないと考えていい」

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