日歯連:5000万円入金すぐ全額出金…報告書に記載なし

毎日新聞 2015年10月02日 15時30分(最終更新 10月02日 19時38分)

 日本歯科医師連盟による政治資金規正法違反事件で、日歯連が2013年に石井みどり参院議員(自民)=比例代表=を支援する政治団体に4500万円を寄付する前、いったん5000万円を後援会の口座に入金しながら、直後に全額を出金していたことが、関係者への取材で分かった。この入出金は政治資金収支報告書に記載されず、虚偽記載の可能性がある。東京地検特捜部もこの資金移動を把握し、立件の可否を慎重に検討しているとみられる。

 政治資金収支報告書によると、日歯連は13年1月23日、西村正美参院議員(民主)=比例代表=を支援する「西村まさみ中央後援会」に5000万円を寄付。西村後援会は同日、同額を石井氏を支援する「石井みどり中央後援会」へ寄付した。日歯連は3月15日にも4500万円を石井後援会へ直接寄付した。

 関係者によると、日歯連の事務局職員は予算案に基づいて3月15日、寄付として5000万円を石井後援会の口座に入金した。しかし直後に5000万円全額を出金し、4500万円に減額して入金し直したという。収支報告書には2度目に入金した4500万円しか記載されていない。政治資金規正法は、すべての支出入を報告書に記載するよう義務付けている。

 この減額作業は、会計担当だった前副理事長、村田憙信(よしのぶ)容疑者(70)が事務局職員に指示して行われた。政治団体間の寄付の年間上限である5000万円を一度に寄付してしまうと、その後に後援会に必要経費が発生した場合でも追加の寄付ができなくなることから、5000万円の入金を知り「身動きが取れなくなる。余剰を持たせておけ」などと伝えたという。

 特捜部は、西村後援会を経由した1月の寄付を、法定の年間上限を隠すための「迂回(うかい)寄付」だったと判断し、9月30日に村田容疑者や、日歯連前会長で現日本歯科医師会長の高木幹正容疑者(70)らを逮捕した。3月の5000万円の入出金は村田容疑者が寄付の上限額を強く意識していた重要な証拠の一つとみて調べている模様だ。近く、石井、西村両議員からも一連の資金移動の経緯を把握していなかったかなどについて、事情を聴くとみられる。【石山絵歩、近松仁太郎】

最新写真特集