ああ、恐怖のオートロック事件(1987年8月23日)

みなさん!ホテルの部屋のドアがオートロックやということを知ってはりましたか?
それくらい、みんな知ってはりますわなあ・・・。もちろん私も知っている、国民的大常識である。

さて、ところはハワイ。私自身は9年ぶり5回目のハワイだが、たらちねの母と愛すべき弟は初渡航。渡航前の手続きやらなんやらで、出発までに、すでに疲れていた。しかも、当時は成田空港経由。関西在住人は成田まで行くだけで疲れまっせ。

私自身は「市内観光」なしで、アーリーチェックイン(当時、このサービスは特別サービスだった)したい気持ちは山々だが、そうもいかない。加えてこの日はなぜか異常に蒸暑かった。そう、むしあつい。

私が1975年に初渡航したのもハワイ。そのとき、ホテルのバルコニーでダイヤモンドヘッドを眺めていると、隣の部屋の米国人・セスナ機のパイロットで1ヶ月の休暇で来たというオヤジに1時間ほど一方的に話しかけられたなかで、「わしは日本行ったことあるで。日本語も知ってるで」と言うんで「言うてみ」といったところ、彼が発音した日本語はたった一言「ムシアツイ」だった。来日したとき余程蒸暑かったのだろう。

日本が蒸暑いのは許せるが、ハワイで蒸暑いのは許されるものではない。初渡航の2人にとってはおおいに不満だったことだろう。
我々は不快指数の高い中、ホノルル市内・近郊観光へと出発したのだった。

さて、初日の行程をすべて消化して、やっとホテルにチェックイン。22階建ての21階の部屋。あとは寝るだけ。順番に風呂に入った訳であるが、この直後、事件は起こったのである。
ホテルの部屋はすべてオートロック。今や、誰もが知っていること・・・。エージェントからも、注意事項として念を押して説明があるが、何をいまさら・・・。と思うくらいの常識中の常識。

私以外は初渡航なんで、うっかり・・・ということもあったかも知れん。しかし!この事件の主役は、なんと私自身であった。OH!超ハジ!!

さあ、その事件の全貌を逐一白状しよう。
風呂入ったあと、ビールを飲みながら夜景を眺めていると、すぐ上にホテル最上階・ルーフのイルミネーションが・・・。私はどうしても屋上に行ってみたい衝動にかられ、缶ビール片手に力強く部屋を出た!

さあ、みなさん。お望みの結末。ルームキーを持たずに出たら、部屋に入れない。・・・旅慣れた私がそんな失態を露呈するだろうか?もちろん「否」である。

私は屋上に行こうと、缶ビール片手に(お断りしておきますが、この行為はマナー違反です。みなさんは、決して真似をしないでください)部屋を出た私は、屋上へ通じる階段を探した。
いや、探すまでもなく部屋を出てすぐ右側にその扉はあった。非常口との表示。しめしめ、と、ばかりにドアを開けて、屋上へ上がって行った。

なんと、屋上へ通じるドアは施錠されていて、私がぬかりなく持参したルームキーでも、この扉は開かなかった。
しゃあないなあ、帰ろか・・・。と、引き返し、21階の非常口まで降りてきて、ドアを開けようとしたところ、開きまへんがな。そう、この非常口こそ恐怖のオートロック事件、本件の主役であった。
おおっ!こんなドアまでオートロックかい!と思い、ルームキーで開けようとした。通常、こういったパブリックスペースのドアは、ルームキーで開くもの。だがしかし!開かない!!!嘘やろ?火事のときどないすんねん!死ね言うんか!!

ま、開かんもんはしゃあない。きっと、このドアの鍵が壊れてるんや。と、気をとりなおして階段を降りて20階のドアを開けようと試みたが結果は同じ。
以後、19階からLBまで階段で降りることになってしまったのは言うまでもない。
ロビーは入れるやろ、と期待したが結果は同じ。ただ、ここのドアは小窓があって、フロントが見える。ドアを叩いたら開けてもらえそうだが、階段は更に地下駐車場へと続いている。地下まで降りてみるか・・・。と階段を降りかけた瞬間!まさに今回の事件のクライマックス、佳境へと突入するのである。

その瞬間、けたたましい警告音が鳴り響き、赤い警告灯が回転した!まさに、非常事態発生である。この瞬間から、私は「侵入者」となったのである。

え、えらいこっちゃ!このままここにおったら、たぶん捕まる。しかも身分を証明するパスポートは持っていない。これは、逃げるしかない!私は、デビッドジャンセン演じる逃亡者、リチャード・キンブルとなって脱兎のごとく地下へ駆け下りた。

リチャード・キンブル、職業医師。
正しかるべき正義も時として盲しいることがある。
彼は身に覚えのない妻殺しの罪で死刑を宣告され、護送の途中、列車事故に遭って辛くも脱走した。
孤独と絶望の逃亡生活が始まる。髪の色を変え、重労働に耐えながら、犯行現場から立ち去った片腕の男を探し求める。
彼は逃げる。執拗なジェラード警部の追跡をかわしながら、現在を、今夜を、そして明日を生きるために・・・・。

私は逃げた。地下1階のドア。やはり開かない。追っ手はどこまで迫っているか?奴らは銃を持っている。今の状況で見つかったら、ぐっどいぶにんぐ!で、許してもらえるとは思えない。
祈る思いで最後のドア、地下2階、駐車場のドアにアタック!!!

ドアは当然のように、ごく自然に開いた。心臓が口から飛び出しそうなくらい感激した。出られた!!!!!
ざ、ぐれいと・えすけえぷ、いんこんぷりいと!。
しかし、問題は追っ手である。ひょっとしたら、外からも駆けつけてるかも知れん。ここで、走ってはいけない。私はその瞬間、逃亡者から、悠然と散歩している謎の東洋人に変身した。

ゆっくり歩いて、ホテルのロビーを横切って、エレベーターに乗り込んだ。21階のボタンを押して、わずかに残っていた、ぬるくなったビールを飲み干した。

部屋に戻ると、「どこ行ってたん?」と聞かれ、「いや、ちょっと・・・」と答えたとき、自分自身の無事を認識した。あ〜、恐かった・・・。

フォトアルバム in Hawaii
美しき島、オアフ島をお楽しみください。


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