◆久方ぶりの更新です
伊藤黒介です

お知らせですが
まんがライフオリジナル連載の拙著『ベルとふたりで』
並びにまんがライフMOMO連載の『イヴ愛してる』
両作品とも連載終了となります
ベルは十一月発売号、イヴは十月発売号で最終回となります

自分で決めました
理由はいろいろありますが
この仕事の先に展望がなくなりました

想像以上に漫画家というのは孤独な職業でありました

普通の仕事であれば職場には
仕事を指示する上司がいて
段取りを教えたり不手際を叱る先輩がいて
相談したり愚痴を言い合ったりする同僚などいたりするものですが
漫画家はそういうものはなくたとえ新人でも
デビューして連載枠を与えられたあとは全部一人で考えなきゃいけない
その孤独さへの準備ができていなかったし結局潰れたということです

もともと人嫌いで友人もいない性格だったけど
一切他人と会うことのない数年はしみじみとこたえた
他人とまったく話さないから見識がぜんぜん広がらなくて
学生当時から増えていない知識量でひねりだすネタも枯れ果てました

立ち位置もわからないし読者がどう思って読んでるのかもわからない
他人からの反応もなく相談相手もなく
自分の漫画がウケてるのかどこをいじればよくなるのか見当がつかず
一人で描いてはデータを送っているだけの独り相撲の状況を自覚したとたん
わーっと嫌になって、衝動的に全部ぶん投げたというのが実情です

漫画家の仕事のやりかたというものがわからぬ
線の引き方もネタの出し方もいまだに全然わからない
作業はまるで効率化できずにどんどん遅くなっていくばかりで
月にたった12頁の作業もままならずリタイアの仕儀となりました

みんなどこで漫画の描き方ってのを勉強してんだろう


◆いまは仕事以前に、人間として他人と関わりたいですねえ
耳の悪い自分が社会に参加するにはどうするかと考えた結果
選んだのが漫画という仕事なんですが
全然ダメでしたね、人と会う機会がまったくない
ずっとひきこもって描いてるだけだった
今年に入ったあたりでなにもかもいやんなってしまったわけです

4コマ新人大賞というものをもらって漫画家という肩書きを手に入れて
これから漫画家なりの生活や交友関係が自然にできるものだと思って
漠然と描いてきたけどつくづく甘く見てました
漫画の仕事自体は原稿を送って終わるだけで他人との接点はなくて
ちゃんと自分で縁を探さなきゃいけなかった

数年間誰とも会わず一人で描いてきた末にそれに気が付いたときには
なにも知らない会話もできない障害者のおっさんが一人出来上がっていた次第です
もうそろそろ自分の人生に結論を出さなきゃならない年齢を迎えました

ここから先の展望はないですが
とりあえずメシが食えるうちはメシを食います


◆いまさら漫画以外にできることもなく
当面の仕事の話もあり、もう少しやってみるつもりです

体力のない自分が漫画家をやるために
環境を整える時間というものをとることにしまして
まず連載という枷から逃れました
知識も経験も全く学べないこの環境にこれ以上いると
作家として人としてますます取り返しがつかなくなってしまうという恐怖感もあった

漫画の相談ができる相手とか、手伝ってくれる人とか探したり
効率よく作業できる形とかそういうのを考えてみます
漫画家というのを舐めてたので、今度はちゃんと準備する

それでダメならそれまででしょう

ひとまず今後の仕事ですが、おそらく成年漫画というジャンルになると思います
4コマ作品に親しまれてきた方には戸惑わせてしまう成り行きかもしれませんが
今いただいているお話がまとまれば当面それで食べていきます
エロ漫画も大好きなのでやってみたかったですし

作家としてのことは正直今は考えたくはないです
なにを作れたところで喜びあう相手もいないんじゃ甲斐もない
作家としてより人間として、人と関われる生活を今は模索することにします
無知な障害者のおっさんを誰が構ってくれるのかが目下の問題
この数年の空白の取り返しはつくのかどうか

そういった状況ですが、ともかく生活のためにもう少し活動は続けます
今後の作品発表についてはその都度ブログやツイッターで宣伝していくので
自分の作品にご興味がおありの方は今少しお付き合いいただければ幸いです