逃亡者ナレーション 冒頭イントロダクション編
「逃亡者」を語るうえで、ナレーションの存在は無視できないでしょう。「リチャード・キンブル。職業医師」で始まる冒頭のナレーションはとても有名です。澄んだ声質の矢島正明さんが一調子テンションを落として喋っている感じがします。冒頭に限らず、節目節目に状況を補足するナレーションが入りますが、中にはオリジナルにはないナレーションも多く挿入されています。日本で放送する場合、CMなどの関係でカットは不可欠ですが、一つのシーンが丸ごとカットされることも珍しくなく、その際に前後の繋がりがわからなくなるのを防ぐ意味もあるのだと思いました。大半の場合は、会話で状況を説明しているシーンをショートカットするために、日本独自のナレーションが挿入されているようです。具体的には、3分の会話シーンのうち2分半をカットし、残りの30秒の間に日本語独自ナレーションを挿入するという形ですが、当然、原語音声は途中で切れてしまってます。「逃亡者」の完全二ヶ国語版DVDがなかなか出版されない理由一つに、このような日本語版の制作方法にも訳があるのかな?とも思われます。 さて、冒頭のナレショーンですが、先に触れた有名なナレーションは 第31話「眠れいとし子」から入るようになり、以後最終回まで続きます。 「逃亡者」の翻訳を担当された額田やえ子さんが、あるインタビューで冒頭ナレーションやオープニング、クロージング・ナレーションについて「『番組の最初に何か決まり文句を付けたい』と番組担当のディレクターさんがおっしゃって、元の台本にはない『リチャード・キンブル。職業医師』というフレーズを原語から聞き起こして作った」とおっしゃってます。ご本人は「恥ずかしいから嫌だ」とおっしゃったそうですが、担当ディレクターさんの「この番組は思いっきりキザにいきましょう」という一言で各エピソードのオープニングやクロージング・ナレーションも、その線で統一されたそうです。
原語ナレーション
第31話以前(第1シーズン)のナレーションは、物語の進行上の理由(途中まで事件の詳細が明らかになっていなかった)からでしょうか、キンブル博士の数奇な運命を語るような内容になっております。
このナレーションは第1話冒頭のものです。第30話までの間に数種類のバリエーションがありますが、基本的な内容には変わりがありません。
イントロダクションの映像は、第1シーズン30話で使用された護送中の列車内、脱線転覆事故、逃走シーンのもの、これには「カエルが出てくるもの」と「出ないもの」という2種類があります。 第2シーズンからは、第3シーズン最終話第90話まで白黒版の「正しかるべき正義」バージョンで、「リチャード・キンブル」という出だしの部分にその回のキンブル博士の一場面が挿入されています。 白黒版の「正しかるべき正義」バージョンも2種類あります。アメリカでの第2シーズン最初第31話「再審への道」(日本では第32話)1話の映像だけが若干異なります。 第91話からはカラー版「正しかるべき正義」バージョンになりますが、キンブル博士の一場面は毎回同じ映像が挿入されるようになりました(2種類あり)。カラー作品となって、高かったフィルムの節約だったのかもと思ったのですが、たまたまビデオ発売されているカラー作品を見たら、冒頭にその回のダイジェストが入っていて、出だしの部分の映像を変える必要が無くなっただけだったようです。その部分は、日本語版ではすべてカットされています。 *YouTubeへのリンクは、サイトの都合により削除されている場合があります。 引用文献 「20世紀テレビ読本 アメリカTVドラマ劇場」 内野真一郎さん著 同文書院刊行 「『逃亡者』より、『コンバット』よ!額田やえ子さんに伺う」 の項より引用させて頂きました。 |