【記者手帳】暴行事件から目を背ける大韓スケート連盟

【記者手帳】暴行事件から目を背ける大韓スケート連盟

大韓スケート連盟(以下、連盟)が男子ショートトラック韓国代表チームの練習中に発生した暴行事件から顔を背けている。

 外部の法律専門家や冬季オリンピックの元メダリストらで構成された連盟の選手委員会は、先月16日に泰陵選手村での練習中に高校生の代表選手に暴行を加えたA選手(22)に対し「警告」の処分を下した。連盟は30日夜、選手委員会によるこの決定を伝える報道資料の中で「暴行を受けたB選手にも責任がある」との見解を示した。つまり暴行を受けた側の高校生選手も「殴られて当然」の言動を取ったということだ。A選手は練習中、あるトレーニングで隊列の先頭を滑っていたが、B選手に追い越される際に転倒し、B選手に暴言を浴びせ顔などを殴った。

 しかし当時の映像を見ると、B選手は無理な追い越しも、また特に危険な行動を取ったわけでもなく、追い越されたA選手が自分で転倒しただけだった。A選手はその時点で足首の負傷が完全に回復しておらず、影響で転倒の際に足首に痛みを感じたとしても、これが暴行を正当化できる理由にはならない。そのためB選手の行為が暴行の原因になったという選手委員会の説明には無理があると言わざるを得ない。これは例えば追い越し禁止車線に突然割り込んできた車が自分の車にぶつかってきた場合には、相手ドライバーに暴行を加えても問題ないといった屁(へ)理屈となんら変わりがない。

 選手委員会はさらに「(暴行を加えたA選手に)下すことができる処分は、規定上、警告あるいは資格停止しかない」とした上で「一人の代表選手が選ばれるまでの厳しいプロセスを考えると、資格停止は加害者側選手の問題行動に比べて厳しすぎると判断した」とも説明した。現在の大韓体育会(KOC)やスケート連盟の代表選手選抜規定には「暴力行為により資格停止処分を受けた選手は、懲戒が終わった時点から3年間は韓国代表選手になれない」と定められている。そのため加害者のA選手が1日でも資格停止処分受ければ、2018年に予定されている平昌冬季オリンピックには出場できなくなるわけだ。

 KOCは2007年からスポーツ界の自浄活動に乗り出しており、特に暴力行為に関しては厳しい態度で臨んでいる。連盟もKOCによる暴力関連の懲戒規定をそのまま取り入れているが、この規定が厳しすぎるのであれば、なぜ見直そうとしないのだろうか。

 暴行を行ったA選手は、5日に予定されている韓国代表の最終選抜試合に出場はできるが、連盟のある幹部は「今後の理事会でA選手に一定期間の出場停止といった処分を下すことは可能」との見方を示している。ただA選手が韓国代表の最終選抜で勝ち抜けば、連盟は韓国代表チームの運営に支障が出ないよう、懲戒問題の再燃に神経を使わざるを得ない。これまで派閥問題や数々の不正で厳しい批判にさらされてきた連盟だが、今回の問題で再び自滅に追い込まれる恐れも出てきたのだ。

スポーツ部=成鎮赫(ソン・ジンヒョク)記者
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