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高橋源一郎インタビュー

AVと子育ての共通点

日本広しと言えども、高橋源一郎ほど小説を愛している男はいないのかもしれない。学生運動にのめりこんだ10代、失語症ゆえ肉体労働に励んだ20代を経て、フタをされていた言葉たちがほとばしった初期の傑作群から始まる彼の歩みを知ることは、そのまま小説の可能性を知ることのようでもある。そんな彼が小説を書くことを通して行き着いた「幸せ観」とは、いったいどういったものなのだろうか。小説家・高橋源一郎流、幸せの作り方をお聞きした。
(インタビュー・テキスト:小林宏彰 撮影:菱沼勇夫)

高橋源一郎

小説家、文芸評論家、明治学院大学教授。1981年、『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞優秀作に選ばれデビュー、古今東西の名作からマンガ、テレビといったマスカルチャーまでを引用するポップかつシニカルな作風により、アヴァン・ポップの旗手と目される。ほかに『優雅で感傷的な日本野球』(三島由紀夫賞受賞)、『日本文学盛衰史』(伊藤整文学賞受賞)など小説作品多数。またエッセイや評論の執筆や、競馬評論など活動は多岐にわたる。
高橋源一郎 (takagengen) on Twitter

高橋源一郎

小説の魅力とは自由である

高橋源一郎は、数ある表現形式の中から、「小説」という器を選び取った男である。そしておそらくは、小説という形式に対して人一倍思い入れがあり、また小説について考え続けている男である。初期三部作『さようなら、ギャングたち』、『虹の彼方へ(オーヴァー・ザ・レインボウ)』、『ジョン・レノン対火星人』では、言葉がまるでダンスを踊るようにハツラツとした姿をさらし、小説というジャンルが持つ「言葉に宿るポテンシャル」を解放するという権利を謳歌するかのようだった。まずは、そんな魅力を放つ作品を生み出した彼の興味が小説へ向かいはじめた頃のことについて伺ってみた。

高橋源一郎

当時、僕のまわりには優秀な詩人や評論家がいて、彼らを見ていると「僕にはできないな」と思ってしまった。それが小説を書こうと考えたひとつの理由です。それから小説って、詩や演劇よりあとにできたものなので出自があやしく、いまだによくわかっていないジャンルで、そのあたりにも惹かれました。僕は評論も書いていますが、書こうと思えば小説のようにも書ける。しかし評論を「詩のように書く」のは難しい。定義が人によって違うし、いまでも勝手に領土を広げている小説というものが、要は一番自由なジャンルなのかなと思ったんです。

小説の魅力とは自由である。それは例えば『日本文学盛衰史』で、かの石川啄木が渋谷のブルセラショップ店長となり、田山花袋の小説『蒲団』がアダルトビデオの素材になり、高橋自身の胃カメラ映像のキャプチャ画像が夏目漱石のそれと重ね合わされるという、時空を超えたストーリーを見ても察することができる。それはたしかに、他のジャンルでは実現できない「楽しい冒険」だろう。

頭の中のイメージが見事に崩れ去る瞬間

では、その小説という器で、高橋が描こうとしている題材とは何なのか。それを知るためのヒントとして、近作の短編集『性交と恋愛にまつわるいくつかの物語』(2005)のうちのひとつ「ウィンドウズ」のこんな一節を見てみたい。「それまで、わたしが見たり経験したりした性交は、あの性交と比べるなら、オブラートにくるまれたようなものだった。お子さまランチみたいなものだった。幼稚園のお遊戯みたいなものだった! 日向ぼっこみたいなものだった! なにも考えずにただやればいいものだった!」。

主人公の頭の中にそれまであった性交についてのイメージが、見事に崩れ去るのを描写したシーンだ。ここで高橋は、なんとなく性交とはこういうものだと把握していたところを、まじりっけなし、本物の性交を目の当たりにすることで大きなショックを受けている主人公の姿を描写している。このように、生半可な解釈ができないくらいに「野蛮なもの」を描き出すことで登場人物や読者を揺さぶるのが、高橋が小説の持つ力として感じていることのように思える。これまで読者が抱いていた価値観が引っくり返されることの精神的な自由を感じること、その感覚を味わうことの幸せを、高橋は小説を通して受け手に実感させようとしているのではないだろうか。

途方もない恋愛、たくさんの死、異常なセックス…驚かせなきゃ小説じゃない

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