14年ぶりの優勝を果たし、笑顔で記者会見するヤクルトの(左から)山田、真中監督、石川、雄平=神宮【拡大】
5月23日の広島戦(マツダ)。四回の守備でミレッジと雄平が激突。転倒する間に打球が転々とし、打者走者の梵も生還を許した。手当てのためベンチに戻った雄平が「大丈夫です」と口を開いた瞬間だった。
「大丈夫なら何で追わない! 意味わかんねえよ!!」。初めて聞く怒声にベンチが凍り付いた。「プロなら、はってでもボールを追うのが当たり前」。伝えたかったのは1球、1点に対する執着心。その雄平が、優勝を決める「1点」をたたき出した。
5月には9連敗を喫して15日間で首位から最下位に転落した。夏場は故障者が続出し、2軍では野手が足りなくなった。「一番苦しかったのは9月に入ってから」。巨人、阪神とのつばぜり合い。マジック点灯後の足踏み…。しかし、そこには、ピンチに声を掛けあい、勝負どころの試合を粘り強く奪う選手の姿があった。優勝を知らない選手たちは大混戦に磨かれ進化していた。
「優勝を目指します」
あの言葉に、信念はあった。座右の銘は『できない理由を探すな』-。ビリからの頂点。そこにも、「できない理由」はなかった。 (佐藤春佳)