「AIIB」事件で米国の敵No.1は
ロシアから中国へシフト
「米国は、ウクライナ軍に武器を大々的に供与することで、戦争を激化させようとしている」――メルケルとオランドは、そう疑ったのだ。戦争が拡大、激化すれば、戦場になるのは(米国ではなく)欧州である。独仏は、あわてて停戦に動いた。
米国は当初、この合意をぶち壊したかったようだが、ある「大事件」が起こり、方針を転換する。「ある大事件」とは、「AIIB事件」のことである。英国は3月12日、米国の制止を無視し、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)のへの参加を表明する。他に、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストラリア、イスラエル、韓国など、米国と緊密な関係にあるはずの国々も、相次いで参加を決めた。
「親米国家群が、米国の不参加要請を振り切り、AIIBに参加する」
このことは、米国の支配層に大きな衝撃を与えた。「誰もいうことを聞かない国」(この場合米国)のことを、「覇権国家」と呼ぶことができるのだろうか?米国の「リベラル派」は長年、「中国は米国が作った世界秩序内で影響力を拡大したいだけだ。それ以上の野心はない」と主張してきた。しかし、「AIIB事件」で、その「神話」は崩壊した。
なぜなら、中国は、「米国の体制の『外』」に「新たな国際金融機関(AIIB)をつくる」のだから。これで、中国は、米国の「仮想敵ナンバー1」に浮上した。
同盟国、親米国家群が軒並み米国を裏切る中、「AIIB不参加」を表明したのが、わが国日本だった。安倍総理は4月29日、米議会で「希望の同盟演説」を行い、大成功を収める。GDP世界3位の日本の力強い支持を得て、米国は「中国バッシング」を開始した。それが、いわゆる「南シナ海埋め立て問題」である。
中国は埋め立てを13年からはじめていたが、米国は突如これを問題視しはじめたのだ(日本にとってはよいことだが)。米中関係は、急速に悪化し、「米中軍事衝突」を懸念する声まで出始めた。
<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海
南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。
軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>(夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信)
その後、両国の対立はおさまったように見えるが、「米中対立そのもの」は、「長期化する」と見ていい。
米国が、「南シナ海問題」をネタに「中国バッシング」を開始しはじめたころ、ケリー国務長官は、モスクワを訪問している。要するに、「中国叩き」をはじめたので、「ロシアとの和解」に動き始めたのだ(中ロと同時に戦うのは愚策なので、ロシアと和解して、中国と戦う)。
<露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」
【AFP=時事】米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。
その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>(AFP=時事 5月13日(水)7時13分配信)