決算整理仕訳が全然わからないからゴロ合わせ…はダメ
どうも千日です。日商簿記3級は複式簿記の初歩的な技能を証明する公的資格です。
仕訳が何とか出来るようになって次にぶち当たる壁が決算整理仕訳という難物ですね。中でも3分法による売上原価の仕訳は多くの簿記初学者の壁となって立ちはだかり、その心を折ってきました。
気の利いた簿記の参考書になると『しクリクリしというゴロ合わせで暗記しましょう』なんて書いてます。
ウェーイ(Wait)
ホントに理解しなくていいんですか?
え?使い方違う?マアいいじゃないですか。英語圏の人にはそう聞こえてマスって、ブルータスが言ってました。
決算整理仕訳、それも売上原価の計算は損益計算書の心臓部です。これを理解せず簿記3級に合格し、経理に配属されたら…
前のブログに書いた経理担当者のように粉飾決算に利用されてて気付かない、なんてことになりかねませんよ。
完璧にマスターするんです!
でははじめます。
売上原価の決算整理仕訳をしないとどうなるか
やってることは、そんなに複雑なことではありません。しかし、これをやらなかったら正確な損益計算書と貸借対照表にならないんです。
ちょっと例を挙げて説明します。前提は以下のような資産を持っており無借金の会社です。
- 現金2百万円
- 期首の商品3百万円
2百万円の商品を仕入れ、代金は現金で受け取りました。
(仕入)2百万/(現金)2百万
仕入れた2百万円の商品の半分を売値2百万円で売りました。
(現金)2百万/(売上)2百万
決算整理仕訳をしない貸借対照表と損益計算書の実例
なんと原価1百万円の商品を2百万で販売したのに、損益計算書に利益が表れません。
おかしいですよね。
- 仕入れた2百万円の商品の半分、つまり1百万円の商品を2百万円で販売したんですから、1百万円の純利益があるはずです。
- それに繰越商品も違います。期首には3百万円あり、2百万円仕入れて1百万円を販売したんですから、繰越商品は4百万円になっているはずです。
売上原価=売った商品の原価を計算しないと、こうなってしまうんです。
売上原価の計算は期首商品を足して期末商品を引くだけ
売上原価は差引計算で計算されるんです。単純な足し算と引き算です。
売上原価の計算自体は簡単です。お店でたな卸しってしますよね。期末や月末に商品の数を数えるお仕事です。
期末の商品が分かれば足し算と引き算で売上原価が計算できるんです。
売上原価=仕入+期首商品−期末商品決算整理仕訳とはこの足し算と引き算を仕訳で行うことなんです
仕訳になると途端に分かりにくくなりますよね。その理由は後述します。
仕入に期首商品を足して期末商品を引く
+期首商品 -期末商品
(仕入)3百万/(仕入)4百万
貸借が一致していませんが、ここまで来ればもう少しです。
貸借が一致しない理由
繰越商品を期末商品に置き換えるという作業をやっていないからです。期首商品を引いて期末商品を足せば置き換わります。
+期末商品 -期首商品
(繰越商品)4百万/(繰越商品)3百万
この二つを合体させると完成します
(仕入)3百万/(繰越商品)3百万
(繰越商品)4百万/(仕入)4百万
参考書はこの形をゴロ合わせで『しクリクリし』と言って憶えろと言ってるんですね。
この処理を難解に感じる理由と「簿記」を身に付ける意味
パッと見て『なんだか左右対称で訳のわからない不思議な仕訳だ』と感じるのは、仕訳から即座に貸借対照表と損益計算書が浮かばないからです。
これは、頭の良し悪しではありません。脳にそういう回路が出来ているか、いないかの違いです。
簿記を身に付けるというのは、仕訳から貸借対照表と損益計算書を結ぶ脳の回路を作るということです。 ある意味、言語の習得に似た所があります。
簿記は世界共通の言語です。英語の文法を知らなくても…
(car)$20,000 /(cash)$20,000
この仕訳で2万ドルの車両を購入したことがアメリカの経理マンには通じます。
ゴロ合わせなんて勿体無いですよ、ホント。
以上、千日のブログでした。
蛇足
前回のブログの粉飾決算に利用された経理担当者の話は、話が話だけに詳しい事は聞けませんでした。
察するに前任者はその経理担当者の上司でしょうね。そんな仕訳は上司がチェックすればすぐバレるからです。
組織ぐるみの粉飾で、知らぬはその経理担当者だけだった…ということじゃないかと思います。
思うに、その経理担当者もまた、薄々は分かってたかもしれませんね。トボけて気付かなかったフリをしたのかもしれません。
知っていたにせよ、知らなかったにせよ犯した過ちによって会社を潰し、自分も職を失った訳です。
実務というのは、検定試験などよりもずっとシビアですね。
仕訳のコツと粉飾決算に利用されたある経理マンの話
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