累計発行部数500万部を超える人気漫画が原作のテレビアニメ「ノラガミ」の第2期「ノラガミ ARAGOTO」が2日深夜からMBS、TOKYO MXほかで順次スタートする。同作はマイナーな神様「夜ト」が、死霊となった少年「雪音」、女子高生「壱岐ひより」と出会い、お互いの絆を深め、成長していくダークアクションファンタジーで、アニメ1期は2014年1~3月に放送され人気を博した。第2期では人気の高い毘沙門編が描かれるほか、新キャラクターも登場する。新作の見どころや、アニメにかける思いなどタムラコータロー監督(35)に聞いた。
――2期のスタートが決まったのはいつごろでしょうか
タムラ:正式に決定したのは昨年の夏です。つまり1期が終わってしばらくしてからですね。ノラガミは監督を受けた当初からずっと2期ができればと思っていたのでうれしいです。1期のシナリオ開発時も、「仮に2期が実現した場合、設定や話に大きな支障が出ないように」と配慮しながら作っていました。その苦労がちゃんと報われてよかった。
――2期では原作ファンに人気の高い毘沙門編が描かれます
タムラ:今だから話しますが、1期のシナリオ開発をスタートさせた時点では、原作の毘沙門編はまだ完結していなくて、どのくらいの分量になるか読めなかったんです。1期を見てくださった原作ファンの方には「なんで毘沙門編がないの」という方もいたと思うんですけど、原作の結末をきちんと見届けた上でないと話を整理できないと判断しました。好きな話なのでやりたかったんですけどね。その後、シナリオの開発途中で毘沙門編が完結したのですが、設定量といい内容といい、与えられた話数ではとてもまとめきれない分量でした。2期に持ち越して正解でした。
――毘沙門編を描かなかったことで、1期では夜ト、雪音、ひよりという主要キャラ3人の関係性をより丁寧に描けていました
タムラ:そのことに後悔はありません。戦うだけのアニメはほかにもあるんですけど、この作品の特徴は3人の関係性。それはスタッフ全員の共通認識として作っていました。2期で描くにあたっても、毘沙門編はどうしても毘沙門や兆麻など、主人公たち以外のキャラが目立ってしまうので、3人の部分を何かしら補足できないかなと考えています。
――タムラさんにとって初監督として臨んだ「ノラガミ」1期。視聴者の反応はどうでしたか
タムラ:今さらですが、ここへ来てようやく手応えを感じ始めました。アニメが終わった後も原作漫画の売れ行きは伸び続けていますし、公式ツイッターもフォロワーが減らず、じわじわと認知度が上がっています。スタッフでのトークイベント(2014年5月、ロフトプラスワンで行われた『ノラガミ』スタッフ・スペシャルトークショー)をやったところ、若い人に交じっておじいちゃんのファンが来てくれた。中には親子で見ているという方もいて、世代間のコミュニケーションツールになったのかなとうれしかったですね。キャラの心情を丁寧に描いたのがよかったのかな。
――確かに「ノラガミ」は一見バトル漫画に見られがちですけど、それだけの作品とは違います
タムラ:ノラガミの原作を読んだときに作品の幅の広さを感じたんです。作者の倫理観、ギャグ、友情、恋愛、お色気であったりとバトル以外にもいろんな要素がいっぱい詰まっていますよね。アニメは特定の要素に特化して映像にするのはそんなに難しくないんですけど、全部をバランスよくやるとなると途端にハードルが上がるんです。映像作品は漫画のように細かく雰囲気をスイッチすることができない。でもあえてそれを要求されるノラガミという作品にチャレンジしてみようと思いました。今のアニメ界に「ノラガミ」を受け入れる余地があるのか。それも見極めたかった。僕としてはノラガミのような作品が残ってほしいんです。ここ最近、特に深夜アニメは特定の要素、もしくは特定のファン層に内容を偏らせる傾向を感じています。それが悪いとは思わないが、それだけじゃつまらない。
――「ノラガミ」は海外でも人気です。2期のYoutubeの予告編も、海外での再生が多いと聞きました
タムラ:らしいですね。海外の人は刀を振る作品が好きだとは聞いていましたが、ふたを開けたら予想以上に多かった。でも刀は入り口でしかありません。海外でも主人公たち3人の関係性をきちんと受け止めてくださった方が多くいて、そこもすごくうれしかったです。国内のアニメ市場は横ばいになっているし、スマホひとつあれば暇つぶしはいくらでもできる時代。「ノラガミ」の海外配信も始まっていますが、今後は世界で配信、他の国の人も楽しめる作品が求められているのかな。
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