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 政治団体「日本歯科医師連盟」(日歯連)が、支援する参院議員の後援会に「迂回(うかい)寄付」をした疑いがある事件で、西村正美参院議員(民主)を支援した2010年参院選の前の会議で、会計担当の副理事長だった村田憙信(よしのぶ)容疑者(70)=千葉県浦安市=が迂回寄付の概要を報告していたことが、関係者への取材で分かった。

 会議には当時の会長だった堤直文(73)=熊本市=、理事長だった高木幹正(70)=岐阜県美濃加茂市=の両容疑者も同席していたという。東京地検特捜部は30日、この3人を政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記載など)の疑いで逮捕し、発表した。弁護人らによると逮捕前、高木、堤の両容疑者は「詳しい資金の移動状況は知らなかった」、村田容疑者は「違法ではないと思っていた」と容疑を否定していたという。

 関係者によると、会議があったのは10年3月中旬。日歯連会長をはじめ、副会長や理事長ら主要な幹部が集まる中で、村田容疑者が、「民主党参議院比例区第80総支部」に5千万円、「西村まさみ中央後援会」に5千万円を寄付すると報告。「活動には1億円かかるので、政党支部から後援会に移して使います」と説明した。「政治資金規正法で、寄付の上限が5千万となっているから」と理由を述べたという。

 当時会長だった堤容疑者はこの発言を受け、「1億円もかかるんですね」などと応じたとされる。

 この会議について、堤容疑者は逮捕前、「報告は受けたのかもしれないが、記憶にない。当時は政治資金規正法の規定もよく把握しておらず、聞いても、違法なことだとは思わなかったと思う」と話していた。

 特捜部によると、堤、村田の両容疑者は西村議員が当選した10年の参院選前の同年5月13日、日歯連が直接、「西村まさみ中央後援会」に5千万円を寄付したのに、西村議員が代表の民主党支部が寄付したように、虚偽の記載をした疑いがある。また、高木、村田の両容疑者は13年参院選前の同年1月23日、実際には日歯連から石井みどり参院議員(自民)の後援会に5千万円を寄付したのに、西村議員の後援会が寄付したように、収支報告書に虚偽の記載をした疑いなどがある。

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 自民党の石井みどり参院議員は30日、「報道で3名が逮捕されたことを知り、大変驚いている。今後の捜査の推移を見守りたい」とのコメントを事務所を通じて発表した。

 石井議員は1980年に地元・広島市で歯科医院を開業後、広島県歯科医師会や日本歯科医師会の役員を歴任。07年の参院選で日歯連の支援を受けて比例区で初当選し、13年参院選でも比例区で再選を果たした。

 厚生労働行政に関心が強く、13~14年に参院厚労委員会の委員長を務めた。

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 民主党の西村正美参院議員は「甚だ残念で、今後の捜査の推移を見守っていく。歯科医療の今後のためあらゆる努力・協力をしてまいる」と文書で述べた。

 西村議員は1996年に東京都中野区に歯科医院を開業。2001年6月の東京都議選に杉並選挙区から立候補したが落選した。民主党が政権与党だった10年の参院選で、民主党公認で出馬し、日歯連の支援を受けて初当選した。

 当選後は参院厚労委員会などに所属。実父は東京医科歯科大同窓会の名誉会長。