久保田一道 伊藤和行 高野遼
2015年10月1日05時02分
日本歯科医師連盟を舞台にした「迂回(うかい)寄付」疑惑は、会長経験者らが逮捕される事態に発展した。政界とのパイプ強化を前面に掲げていた歯科界のトップと、長年にわたって連盟の資金のやりくりを一手に担ってきた「金庫番」。東京地検特捜部はそれぞれの役割の解明を進める。
「今回の診療報酬改定がうまくいったのも、高木会長のお陰だ」
今年1月、日本歯科医師会の会長選に立候補した高木幹正容疑者(70)の決起集会で、飯島勲・内閣官房参与は日歯連会長としての手腕を持ち上げた。菅義偉官房長官や自民党の谷垣禎一幹事長からの激励のメッセージも披露され、政界との人脈の太さが示された。
高木容疑者は、岐阜県美濃加茂市で個人医院を経営。同県歯科医師連盟の会長を務めた。地元では道場で師範として空手も教える。「声が大きくてよく食べる。快活な印象」。日歯連の元幹部はそんな印象を抱く。2009年から理事長として日歯連の運営に関わり始め、11年から約4年にわたって会長を務めた。
「歯科医療におけるパイの拡大と財源確保」「人脈の強化」。高木容疑者は連盟の会長当時、ホームページで重点課題についてメッセージを出し、「尽力してくれる政治家・官僚等の人材養成」を目指す方向性を打ち出した。
昨年10月には、当時の歯科医師会長らと共に、安倍晋三首相との会食の約束をとりつけた。関係者によると、会食の際、高木容疑者は高齢社会の中で歯科医療が果たす役割を力説したという。高木容疑者と親しい歯科医は「理想にまっすぐな人」と評価する。
一方、その手法には、懸念もあった。今回の疑惑は、会長選まっただ中の今年1月、連盟の会議で問題提起され、明らかになった。連盟は高木容疑者の名前で、「違法ではない」との文書を各都道府県連盟に送り火消しを図ったが、組織は二分された。「誰にも相談せずに政治家に会い、政治との関わりを求めすぎる面がある」。組織運営を危ぶむ声もささやかれた。
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