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 過激派組織「イスラム国」(IS)の前身組織に戦闘員として加わり、シリアのアサド政権軍に拘束された3人が、首都ダマスカスで朝日新聞記者の取材に応じた。いずれも中央アジア出身で、アサド政権打倒の「ジハード(聖戦)」に参加するためシリア入りした。3人はISの残虐な行為を非難したが、未練を断ちきれないようにも見えた。

■戸建てに住みミニバンも支給

 「ISに戻ることがあれば、上官の指示に従うと思う。『殺せ』と命じられれば、殺すかもしれない」

 少年の面影を残すムハンマドヤヒヤ・ハーキムジャンノフ元戦闘員(22)が、ゆっくりとそう語った。

 キルギス第2の都市オシ出身。イスラム教スンニ派の家庭に育ち、2011年、スンニ派の最高学府、エジプト・カイロのアズハル大学に進学。イスラムの指導者を目指し、イスラム法学などを学んでいた。

 13年春、カイロ郊外のモスク(イスラム礼拝所)で過激派と出会い、「スンニ派を虐殺するアサド政権打倒を」と、シリアでの「ジハード」に誘われた。

 同年9月、空路イスタンブールへ。空港でトルコ人の協力者からシリア国境へのバスチケットを渡され、国境では過激派のシリア人男性に迎えられた。彼の手引きで国境フェンスの穴を通ってシリア北部アトマに越境した。警備中のトルコ軍兵士に見つかったが、止められなかったという。

 アトマには「ジハード」参加を希望するキルギス人約200人が集まっていたという。小型バスで北部バーブへ連れて行かれ、ISの前身組織に合流した。「やっとジハードに参加できる」。誇らしい気持ちだった。

 1カ月ほど武器の使用訓練を受け、ISが首都と称するラッカ行きを命じられた。そこにはキルギス人戦闘員が約1千人いたという。アラビア語に堪能なハーキムジャンノフ元戦闘員は通訳の仕事を命じられた。

 給料は月50ドル。ISが接収した戸建ての一室に住み、衣料や食料は配給された。移動用に外国製ミニバンも支給され、ガソリンは使い放題だった。

 ラッカには、イスラム教の厳格な解釈に基づく統治を目指すISに共鳴したイスラム教徒が世界中から集まっていた。「理想とするイスラム中心の生活ができる」と期待した。

 だが14年4月、ISと対立するアルカイダ系過激派組織「ヌスラ戦線」の捕虜7人が、後頭部を銃撃される「公開処刑」を見た。「イスラム教徒がやることか」。ISに参加することに初めて迷いが生じた。