(c)John Harrington/Harvard Business School
カンター 女性にとって家庭というのはとても重要なものなのです。家庭と仕事を両立できるように、政府も企業も支援していかなければなりません。
2つ目は、テクノロジーの分野にイノベーションをもたらすことです。日本では高度なIC交通カードが普及していますが、アメリカにはまだありません。たとえばその技術を輸出してはどうでしょうか。日本のイノベーションは国内だけではなく、海外の人々の生活の質を上げるのにも貢献できるのです。
それに加えて日本は高齢化社会ですね。高齢化社会であることはイノベーションを生み出しやすいという利点があります。
佐藤 高齢化社会がチャンスだとはどういう意味でしょうか?
カンター たとえば、高齢者が多ければ「若い労働者が不足しているから、道路も鉄道も思うように建設できない。それならどうしようか」と考えますね。それを解決するにはイノベーションを起こすしかありません。
3つ目は、世界の国々との人材交流を深めることです。たとえば、政府は日本人学生の海外留学をもっと支援してはどうでしょうか。留学生は、外国との絆を深めてくれるだけではなく、外国で得た知識を日本のために生かしてくれます。
4つ目は、世界を変革するリーダーとなる若者を育成することです。日本の若者が熱心に英語を学んでいるのは知っていますが、語学だけでは不十分です。これからの若者は日本だけではなく世界を相手に仕事をしなくてはなりません。そのためには幅広い知見が必要なのです。日本人とは違う考え方を持った人々と分かり合えなくては、外国でビジネスはできません。
佐藤 日本国内には、素晴らしいテクノロジーや製品が眠っています。ところがそれを世界に広める人材が圧倒的に不足していると感じています。
カンター 歴史を見ても、日本はずっと同質的な社会だったわけですから、異質な人々と交流する機会はあまりありませんでした。同じ国の人々とどうやってうまくやっていくか、に注力していればよかったわけです。それが多民族国家であるアメリカや中国と大きく違うところです。
そうはいうものの、日本の将来にとって、ダイバーシティーは不可欠なものです。未来を見据え、ビジョンをもち、変革をもたらし、外国とも友好な関係を築いていくのがリーダーです。
日本人は社会の役に立ちたいという思いが強いですね。その他者を思いやる気持ちを日本国内だけではなく世界のために役立ててはいかがでしょうか。日本人の方々が世界の人々の幸せを思いやりながらビジネスをすれば、外国の人々からもっと感謝されます。他国への思いやりは日本へと返ってくるのです。それが将来、日本の大きな資産となるのは言うまでもありません。