土田貴宏の東京デザインジャーナル|nendoの個展がおもしろい。

おそらく世界でいちばん忙しいデザインスタジオ、nendoの個展「nendo 3/3」が表参道のGYREでスタートした。11月まで「1/3」「2/3」「3/3」と3部構成で展示内容を変えつつ、彼らの驚異的な発想力と高度な表現力を3つの角度から見せつける。

会期は、第1部「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」(開催中〜10月4日)第2部「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」(10月6日〜10月28日)第3部「nendo 3/3 モノ モノ スキマ」(10月30日〜11月22日)の3部構成。

今回の個展「nendo 3/3」は11月22日まで2か月以上も続く長丁場。3部構成の第1部「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」の開催は10月4日まで。以降、10月6日から「nendo 2/3 ヘヤ モノ スキマ」、10月30日から「nendo 3/3 モノ モノ スキマ」となる。それぞれに異なるメッセージを発しながら、3パートを通して見ると浮かび上がってくる軸に、現在のnendoらしさがある。そんな展示を、代表の佐藤オオキは意図しているそうだ。

大館曲げわっぱのつまようじ入れ。通常は筒状に成形する曲げわっぱを渦巻き状にして、複数の機能をもたせた。

第1部の「nendo 1/3 ヒト モノ スキマ」で展示されるのは、イタリアのミラノ国際博覧会でnendoが手がけた「colourful shadows」展のための16コレクションで、すべて日本初公開。日本各地の伝統工芸や地場産業と組み、もの作りのポテンシャルを引き出したアイテムが並ぶ。1点1点、作り手の強みをしっかりふまえながらも、意外性のあるデザインになっているのが見どころ。展示品が基本的に黒1色なのは、色の情報を限定し、精緻な技やきめ細かい仕上げを際立たせようと考えたからだ。

一筆書きのような展示什器は、ギャラリーの空間の形に合わせて発想された。

展示空間もユニーク。会場には白く細長い什器が一筆書きのように配置され、そこに展示品を置いた。複数の部屋に分かれたギャラリー空間が前提のサイトスペシフィックな見せ方で、来場者の動きを誘導する。「この什器は土台がなく、床に置いているので本当にテーブルと同じ。天板を支える脚は最小限の本数なんですが、2か所で壁や柱と接しているからちゃんと自立するんです」とnendoの佐藤。テーブル状の設えは、展示品がすべて食関連のアイテムであることも意識している。

江戸切子(木本硝子)のタンブラーは、あえてミニマルにカッティングを施している。

今後、「2/3」ではこのギャラリーの空間から発想した新作家具が、「3/3」では海外で発表したアート色の濃い作品などが展示され、会場の使い方も「1/3」とは大きく違うものになるという。時間軸も展示の要素に取り込むことで、nendoならではの密度の高さとスケールの大きさを同時に備えたエキシビションになりそうだ。

nendo 3/3

〈EYE OF GYRE〉

東京都渋谷区神宮前5-10-1
GYRE3F。TEL 03 3498 6990 。開催中~11月22日。10月5日、10月29日休。11時~20時。入場無料。公式サイト

土田貴宏

つちだたかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。