上海株:2カ月半で4割下落 取引再開後どうなる

毎日新聞 2015年09月06日 12時24分(最終更新 09月06日 12時37分)

上海総合指数の推移
上海総合指数の推移

 中国の景気減速懸念の高まりが、このところ世界各国の市場で連鎖的な株価急落を招いている。中国では上海総合指数と呼ばれる数値が株価全体の上昇や下落を示す指標となっているが、今年6月12日に5166.35だった指数は9月2日に3160.17と、約2カ月半で4割近く下落した。3日からは国家式典のため市場が閉じているが、中国景気の先行き不透明感は強く、取引が再開する7日以降も上海総合指数は不安定な動きを続けそうだ。

 中国大陸には、金融センターの上海と、政府の改革開放の拠点の深センにそれぞれ証券取引所がある。上海証券取引所は、1990年12月19日に中国で初めて開業した。9月2日現在の上場企業数は1071社と、深セン(1729社)よりも少ないが、ベンチャー企業や中小企業が多い深センに比べ、大手国有企業など中国を代表する企業が多い。このため、同取引所に上場する全銘柄の値動きをもとに算出する上海総合指数は、日本の日経平均株価や、米国のダウ工業株30種平均のように、中国を代表する株価指数として国内外で認識されている。開業日を基準日として、91年7月15日に公表が始まった。上海証券取引所では人民元で売り買いする上海A株と、外貨で売り買いする上海B株がある。A株とB株の値動きをもとに算出した株価指数が上海総合指数だ。

 ◇中国個人投資家、短期売買の傾向

 激しい値動きの背景には、中国市場の特殊性がある。中国政府は海外からの投機的な資金の流入を警戒し、資格を与えた外国の機関投資家に一定の投資額の範囲でしか取引を認めていない。東京市場では取引の約6割を外国人投資家が占めるが、中国は数%程度にとどまる「閉ざされた市場」になっている。先進国市場で取引の中心を占めている年金基金などの機関投資家も中国では育っておらず、取引の約8割を国内の個人投資家が占める構造となっている。

 中国の個人投資家は、株式の長期保有よりも短期的な売買によって利ざやを稼ごうとする傾向が強いため、一斉に株を売ったり買ったりする動きにつながりやすい。過去にも急騰と急落を繰り返し、激しく変動してきた。92年5月21日には、終値が前日の2倍以上に上昇するなど株ブームが起きたが、市場の過熱を懸念した政府が規制強化を打ち出すと、同年11月までに約7割も下落した。また、2007年10月16日に終値の最高値(6092.06)を付けた際には、1年間で約3.4倍に上昇し、その後1年でほぼ同じ程度下落した。株価急落が始まった今年6月中旬以前も、指数は1年前の約2.5倍に上昇していた。

 ◇政府の思惑が株価直接左右

 政府の市場への関与が大きいのも特徴だ。中国では、企業の新規上場の審査は証券取引所ではなく、中国証券監督管理委員会が行う。株価が低迷した13年ごろは、上場企業が増えて投資が分散すると株価全体がさらに低迷するため、同委員会は企業の新規上場を一時認めなかった。

 また、6月中旬以降の株価急落では、政府系金融機関に株を購入させたり、国有企業に持ち株を売らずに買い増すよう指示したりするなど、政府が株価下支えに動いた。損失拡大による個人投資家の不満が、社会不安につながるのを懸念したためとみられる。

 株価下支え策など政府による市場への関与は、株価安定などに一定の効果を果たしているとみられる。だが、「最後は国が助けてくれる」という投資家のモラルハザード(倫理の欠如)を招く恐れもある。8月14日に政府が株価下支え策を縮小させる姿勢を示唆すると、その後株価は急落。政府の思惑が、日々の株価を直接左右する状況になっている。

 先進国の市場とは異なる中国の株式市場だが、世界第2位の経済大国となった今、その動向が世界の市場に与える影響は大きくなっている。そのため「今回の株価急落を教訓に、外国人への投資開放など改革を進めるべきだ」(国際金融関係者)との指摘も出ている。【北京・井出晋平】

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