日曜美術館 アートシーン ▽“明治有田 超絶の美”展 ほか 2015.09.27


「アートシーン」です。
初めは明治の職人が海外に打って出るためにさまざまな工夫を凝らした有田焼の展覧会からです。
壺を覆い尽くす装飾。
段ごとに異なる色や模様を組み合わせています。
全て手描きでありながら寸分の狂いもありません。
現在では再現不可能と言われる明治の超絶技巧です。
来年創業400年を迎える有田焼。
明治時代の名品を紹介する展覧会です。
明治維新によって佐賀藩の規制がなくなると有田では自由な生産が始まります。
初期のコーヒーセット。
このころ輸出用の磁器が数多く作られました。
人気があったのが東洋趣味の洋食器。
コーヒーポットのつまみは桃の形。
窓絵には和風の人物が描かれています。
高さ185センチもある巨大な花瓶。
明治6年のウィーン万博に出品されたものです。
染め付けの上に豪華な蒔絵を施しています。
当時の磁器生産は今で言う自動車産業。
国の威信を懸け作られた大作です。
作陶の変遷が分かる貴重な図案も展示されています。
これは初期に描かれたもの。
外国人の好みを反映した派手な色使いがこのころの特徴です。
窓絵には鶴と唐子。
いずれも吉祥を表す伝統の図柄です。
こちらは明治33年のパリ万博に向けて描かれたもの。
日本画の絵師が呼び寄せられ和風ながら洗練された新しいデザインが生み出されました。
こうした作品は実物がほとんど残されていないため図案が貴重な資料です。
明治の有田焼は奇抜なデザインを次々生み出しました。
シュガーポットやカップが全て鳳凰形のトレイに収まるコーヒーセット。
全体を金で覆い霊獣・麒麟を白抜きで表すという手の込んだデザインです。
当時絶頂期を迎えていた職人さんの技術が国内ではなかなか求められていない時代でしたから海外からの依頼に持っている技術全てを注ぎ込もうとした職人さんのやる気や心意気をどれからも感じますよね。
これまで有田焼は江戸時代の古伊万里が評価される事が多かったんですが今回は明治の有田焼の魅力に触れられそうです。
ではその他の展覧会です。
公募展「二科展」が今年第100回を迎えるのを記念してその歩みを振り返ります。
大正3年二科展は自由な気風を求める若い洋画家たちによって立ち上げられました。
トラの毛皮を身につけた大きな耳の「鬼」。
立ち上げの中心メンバー有島生馬が第1回展に出品した意欲作です。
スーツを着込んだ小出楢重。
ヨーロッパ遊学のあと生活を完全に西洋化しました。
しかし画風のうえでは単なる西洋のまねではなく日本独自の洋画表現を目指します。
個性豊かな画家たちが二科展の100年を彩りました。
ふるさと「山陰」で制作を続けた植田正治。
植田がカメラを向けた「場所」に注目します。
自然の砂浜を使ったいわゆる「植田調」の写真。
自宅から程近い鳥取県弓ヶ浜が舞台です。
岩場に波が打ちつける青谷の海。
演出写真で知られる植田ですがふだんからカメラを携え身近な風景の中に新しい発見をしていました。
一本道で学校帰りの少年を待ち構えるおちゃめな一面も。
アイヌの人々による木の工芸品およそ450点を紹介する展覧会です。
杯の上に載る棒状のものは宗教儀礼に使われる「イクパスイ」。
杯に入れた酒の表面をイクパスイで波打たせ人々の祈りを神に伝えます。
家ごとに創意を凝らしさまざまな造形を生み出しました。
アイヌの人々は必要な道具を自らの手で作ります。
渦巻き模様「モレウ」。
「力」が備わるようにという意味が込められています。
木の繊維を織って仕立てた衣服。
袖や襟には装飾と補強を兼ねて模様が施されています。
戦後の沖縄美術復興の原点となったニシムイの芸術家たちを紹介する展覧会。
1948年電気も水道も無い首里城の北部に芸術家たちが移り住み美術村をつくります。
創設メンバーの一人名渡山愛順が疎開先で描いた作品。
ふるさと沖縄でもう一度絵を描きたいという切実な思いが込められています。
戦後荒れ果てた沖縄で画家たちはアメリカ兵の肖像を描くなどして生活をつなぎました。
そこから日米の交流も生まれます。
厳しい状況の中美術の火をともし続けたニシムイの芸術家たち。
黄色い福寿草と青光りする奇妙な岩。
そして真っ黒な九官鳥。
知られざる大坂の絵師林苑が描いたエキゾチックな風景です。
中国に憧れ「唐画」を描いた絵師たちを紹介する展覧会です。
江戸中期の大坂画壇で個性的な絵を描いた二人の絵師が今回の主役。
その一人墨江武禅は山水画を得意としています。
山水画ではしばしば月を描いて夜の情景を表しますが武禅は違う方法を試みています。
家屋の窓に薄く朱を塗り明かりをともした様子で周囲の闇を感じさせます。
当時文人たちの間では変わった石をめでる趣味が流行していました。
中でも武禅が熱中したのが「占景盤」。
鉢の中に石や砂を盛り山水の景色をつくりだすものです。
自分の趣味さえ絵にしてしまう。
大坂画壇にはそんな自由な空気がありました。
もう一人の主役林苑が中国の画家・沈南蘋に倣って描いた花鳥画。
長寿を表す桃と出世を象徴する鳥のつがい。
さまざまな表情を見せる桃の葉や細かに描き込まれた鳥の羽。
技をアピールするかのように緻密に仕上げています。
こちらも同じ苑の作品。
打って変わって墨の素早いタッチで蹴鞠をする人物をとらえています。
鞠を顔面に受けたのは立派な着物を着た僧侶か医者か。
大坂画壇ならではのユニークな表現です。
新しい才能に出会う喜びといいますか京都の絵師達の作品は紹介される機会が多いんですけれどもこんなにテクニックがあった人たちが大坂でも活躍していたんだというのを発見して頂けるような機会になればと思います。
同時代京都で活躍した絵師たちの大坂ゆかりの作品も展示されています。
こちらは伊藤若冲が淀川を下った時の体験をもとに作った拓版画です。
板に絵を彫り拓本をとるように紙の上から墨をのせる凝った作りの作品です。
「アートシーン」でした。
ではまた次回。
2015/09/27(日) 20:45〜21:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“明治有田 超絶の美”展 ほか[字]

「明治有田 超絶の美 展」(そごう美術館 9月5日〜10月4日)ほか、展覧会情報

詳細情報
番組内容
「明治有田 超絶の美 展」(そごう美術館 9月5日〜10月4日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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