大切なのは、日本の閉鎖性を乗り越え、国際社会と連携していかに「国を開く」かという意識を持つことである。

 安倍首相が国連総会の一般討論演説で、シリアとイラクの難民と国内避難民に向けた支援を手厚くし、昨年実績の3倍となる約970億円を拠出すると表明した。

 難民問題は、地球規模の対応が迫られる深刻な人道問題だ。日本の資金提供は、いままさに苦難のなかにある人々への緊急の支援として評価できる。

 ただ、それだけでは物足りない。日本として、国際社会とともに、もっと多様な難民の受け入れ策を打ち出せないか。

 確かに、地理的な距離も難民の希望も、欧州と日本の事情は異なる。だとしても、昨年、日本が受け入れた難民はわずか11人。国際的な責任を果たしているとはとても言えない。

 たとえば、来週予定される内閣改造で、難民・移民問題の担当閣僚を置いてはどうか。民間の知恵と経験を借りながら、省庁横断で本格的に検討する態勢を作る必要があるからだ。

 日本の厳しすぎる難民認定基準は見直す必要がある。永住を想定するだけでなく、難民の若者を留学生として受け入れることもできるだろう。医療先進国の日本で治療を希望する難民を受け入れることも、日本にふさわしい貢献だろう。

 さまざまな支援策を官民あげて検討し、できるだけ早く国際社会に示してほしい。

 首相は演説で「私たちの変わらぬ原則とは、いかなる時にも、問題の根元へ赴き、状況を良くしようとすることだ」と語った。きのう公布された安保法制にも言及し、国連平和維持活動(PKO)での自衛隊の役割拡大を強調した。

 資金支援も、自衛隊のPKO派遣も、日本にとって重要な国際貢献なのは確かだ。

 気がかりなのは、日本政府の発想が、資金を出すか、自衛隊を出すか、その二者択一にとどまっているように見えることだ。国際社会の問題を国内に受け入れ、解決に寄与するという発想が感じられない。

 首相は「国際協調主義にもとづく積極的平和主義」が日本の旗だと強調した。ならば、喫緊の課題である難民問題にもっと柔軟な発想で取り組むべきだ。そんな姿勢があればこそ、積極的平和主義に対する国内外の理解も進むだろう。

 国を開き、国際社会とともに歩む。そのために何より重要なのは、政治のリーダーシップにほかならない。