Updated: Tokyo  2015/10/01 00:55  |  New York  2015/09/30 11:55  |  London  2015/09/30 16:55
 

監視委事務局長:罰則強化の必要性示す-東芝会計問題や金利操作で(1)

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    (ブルームバーグ):証券取引等監視委員会は、東芝の不適切会計問題やUBSなどを舞台に世界の金融市場に広がった金利の不正操作事件を踏まえ、法令違反などに対する罰則強化に関心を持っている。不正行為を未然に防止するための取り組みにも力を入れる方針だ。金融取引のグローバル化が進む中、監視機能を強化して日本市場の信頼性を高める狙いだ。

7月に就任した佐々木清隆事務局長(54)は、ブルームバーグの取材に対し、「罰則のあり方はその国や市場の歴史や倫理観などの違いにより、国によって差異があってもいい」とする一方、日本では「不正の抑止力となっていたコミュニティの結束が弱くなってきており、時代に合わせた制裁の強化は必要だ」と述べた。これまでは「昔ながらの恥の文化や共同体意識が抑止効果を持ってきた」という。

2011年末に発覚したLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)、TIBOR(東京銀行間取引金利)不正操作では、日本の当局による行政処分はUBS証券とシティグループ証券への5-10営業日の業務停止命令だった。これに対し海外の当局はUBSに14億スイス・フラン(1300億円)に上る制裁金を科した。東芝の不適切会計問題は過去7年分の決算修正にまで発展した。

佐々木氏は監視委の業務は現在の仕組み上、「どうしても事後チェックになる」が、被害や市場の信頼回復には「高いコストがかかる」とし、不正抑止機能を強化したい意向を示した。具体的には法令違反が行われていないかを調べる証券会社などへの検査で把握した問題点を整理してより積極的に公表し、市場参加者の意識を高めて不正の抑止を狙う。同時に市場のグローバル化を踏まえ、現在は全体の1割程度となっている国際実務に精通した人材を増やす方針も明らかにした。

市場の公正性

佐々木氏は東芝で問題となった開示検査についても重視していく意向を示した。「適正な開示が行われないということは、市場の公正性にとどまらずコーポレートガバナンス(企業統治)、日本経済発展の上でも極めて重要な問題だ」と述べた。東芝の9月7日の決算訂正発表を受けて監視委は同社への調査を本格化させており今後、金融庁に対し課徴金などの処分を勧告する見通しだ。

早稲田大学法学学術院の黒沼悦郎教授は、監視委はグローバル化に対応して「海外にまたがる事案、例えば海外の発注による日本での不正取引など国内法が適用できる事案をもっと積極的に摘発するべきだ」と指摘する。「これまでは海外当局との連携を優先し、摘発に慎重なケースが多々あった。摘発で判例や経験を積み上げれば、監視力は強化されていく」と期待した。

日本の当局は一部ではすでに罰則強化に動いている。12年にみずほフィナンシャルグループや国際石油開発帝石などの公募増資に絡み、幹事証券からの情報漏えいによるインサイダー取引の摘発が相次いだのを受け、情報漏えい者を新たに処罰対象に加えたほか、他人の資産による不正取引で課徴金を引き上げる法改正を実施した。世界に広がった金利操作の摘発は監視委が1年早かった。

佐々木氏は1983年東大法卒、大蔵省に入省。OECD(経済協力開発機構)に2度とIMF(国際通貨基金)で計3度の海外派遣を経験している。2005年に監視委事務局特別調査課長に就任し、カネボウ、ライブドアの粉飾決算事件を摘発。金融庁検査局審議官兼公認会計士・監査審査会事務局長などを経て15年7月より現職。東京都出身。「霞が関の役人のイメージは性分に合わない」とファッションにも気を使う。

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記事に関する記者への問い合わせ先:東京 谷口崇子 ttaniguchi4@bloomberg.net;東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Marcus Wright mwright115@bloomberg.net; Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 平野和, 持田譲二

更新日時: 2015/09/30 10:56 JST

 
 
 
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