保健副教材:米国人データで誇張 がん発生原因の注釈なく

毎日新聞 2015年09月30日 08時30分(最終更新 09月30日 11時00分)

 文部科学省が作製した高校生向け保健副教材で、がんの知識に関してもグラフが不適切に配置されていた問題で、グラフは日本人に関するデータで、がん発生と生活の関係を示しているにもかかわらず、表題と説明文の一部は、約20年前の米国人のデータを注釈なく引用していたことが29日分かった。米国の調査の方が、生活が関係するがんの発生割合が高く、生活の改善で、がんを予防できる可能性を誇張するような内容となっていた。

 文科省は「米国の調査は一部の教科書に掲載されており、教科書と副教材の連携を高めるために冒頭で使った」としている。

 グラフは、喫煙や飲酒など生活に関係の深い、がん発生原因の割合を示したもので、出典として「国立がん研究センター(2011年)」などと記載され発生割合は計51・4%となる。

 ところが、グラフを挟んで掲載した表題と説明文の1行目では「がんの発生原因の6割は普段の生活と関係している」などとし、食い違っていた。

 毎日新聞の取材に対して文科省が示した表題と説明文の引用元は、米国ハーバード大が1996年に発表した米国での調査。その資料には「アメリカでの推計値であって日本人とは事情が異なることに注意が必要」と記載されていた。しかし副教材では何の説明もなく、引用元も米国の調査であることも記載されていなかった。【山田泰蔵】

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