【萬物相】「自分自身をディスる」政治

【萬物相】「自分自身をディスる」政治

 米国で研修していた2000年、人気コメディー番組『サタデー・ナイト・ライブ』が大統領選挙候補者を取り上げ、風刺しているのを見た。共和党ジョージ・W・ブッシュ候補は親に全てを頼る「ファーザーコンプレックス、マザーコンプレックスの持ち主」として、民主党アル・ゴア候補は全ての質問にいつも同じ答えを繰り返す「ちょっと足りない人」として描写されていた。番組途中からブッシュ氏の両親であるジョージ・ブッシュとバーバラ・ブッシュ夫妻が出てきた。夫妻は息子をかばうどころか終始コミカルなトークと表情で息子のことを悪く言った。息子の弱点を人間的魅力に変える夫妻のユーモアが印象的だった。

 2012年に英国のチャールズ皇太子が母エリザベス女王の即位60周年を記念して演説した。チャールズ皇太子は何度も「陛下(Your Majesty)」と言いかけながら「ママ(Mummy)」と言い直した。厳粛な英王室ではなかなか聞けない「平民」の言葉遣いだった。客席からは笑いの渦が巻き起こった。メディアは、チャールズ皇太子が60歳を過ぎても王位を継承できない身の上を自虐的に語り、記念の日のお祝いムードを盛り上げたとして好意的に受け止めた。

 政治家たちは自分自身(self)をディスって(disrespect、さげすんで)、世間の共感を得ることがよくある。これは韓国で「セルフディス」広報戦略と言われる。disrespectを省略した「ディス(dis)」は「軽蔑する、けなす」という米国のスラングだ。オバマ大統領が先日、健康保険改革を支持してほしいとしてインターネット上に動画をアップした。動画で大統領は牛乳にクッキーを浸して食べようとするが、クッキーが大きすぎてカップに入らなかったため、「Thanks, Obama」(直訳:ありがとう、オバマ)と言ってため息をつく。何かうまくいかないことがあったとき、「みんなオバマのせいだ」という意味で言う決まり文句「Thanks, Obama」を自分自身に向かって言ったのだ。

 韓国の最大野党・新政治民主連合が「セルフ・ディス・キャンペーン」を開始した。「党員全員が反省し、初心に返って国民の気持ちをつかむためのプロジェクト」だという。広報委員長として迎えられた広報専門家ソン・ヘウォン氏の最初の作品だ。党代表の座を争った文在寅(ムン・ジェイン)代表と朴智元(パク・チウォン)議員がトップバッターとして登場した。文代表は「強いカリスマ性を示せなくて」、朴議員は「湖南、湖南(=出身地の全羅道)とばかり言って」申し訳ないと語った。これから毎週2人くらいずつでバトンを引き継いでいくそうだ。

 野党は2007年の大統領選挙以降、ほぼ全ての選挙で負けている。「反省」を口にしてはいるものの、派閥分裂を繰り返したり、庶民生活の足を引っ張ったりしている状況は変わっていない。このままでは次の総選挙や大統領選挙も危ない。今回のキャンペーンはそうした危機感が背景にある。「国民の支持を再び得るための前向きな試み」という評価がある一方で、「どこかぎこちない政治ショーだ」という見方もある。だが、結局は口先ではなく行動により反省と変化を見せていけるかどうかで、「セルフディス」の成否が決まることだろう。

申孝燮(シン・ヒョソプ)論説委員
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