ソウル大工学部の教授26人がこのほど、先進国と中国など新興国の狭間で限界に直面している韓国産業界の現状を分析した書籍を出版した。いずれも半導体、ディスプレー、造船など韓国を代表する産業分野を専門とする教授で、産学協力事業を手掛け産業の現場も熟知している。教授らを出版に向かわせたのは、韓国の産業に対する切迫した危機感だ。教授らは、韓国企業は先進国の設計図を模倣・改良して製品を作ることは得意だが、最初の設計図を描くスキルは足りないと指摘し、これこそが韓国産業界の一番の問題だと警鐘を鳴らした。
韓国で最も長い橋である仁川大橋は、日本やカナダ、英国の技術を借りて建設したもので、専門家に言わせると「韓国製なのは見掛けだけ」だ。また、半導体産業もすでに規格が決まっている半導体メモリー市場では圧倒的なシェアを誇るが、規格が確立していないメモリー以外の分野ではシェアが10%にも満たない。韓国産業界のほぼ全ての分野で状況は似たり寄ったりだ。
教授らは、模倣を脱し創造力を発揮する段階にステップアップしなければ、韓国は遠からず中国に追い越されると見込む。韓国産業界はこれまで、論文や特許のように公開された情報を基に先進国を追いかけてきたが、中国が同じ方法で急速に韓国を追い上げているためだ。韓国と中国の技術格差は昨年が1.4年と、2010年の2.5年に比べ1年以上縮まった。
産業工学を専門とする教授は「産業先進国が100年かけて積み上げた技術を、中国は10年で10倍多くの研究を進めるやり方で猛追している。すでに海洋プラント、自動車、家電、携帯電話などほぼ全ての産業分野で中国が世界初のモデルを提示する段階に達した」と指摘している。
教授らは、中国が作成した設計図を基に韓国が製品を作り、再び中国に納品するような状況が訪れるかもしれないと、焦燥感をあらわにする。中国が手に入れたグローバル企業のノウハウも、いつしか無視できないほどの水準に達している。中国は今年5月「25年までに世界の製造強国に仲間入りする」との目標を提示し、高付加価値製品を作る方向に産業構造を変えていくと宣言した。