【コラム】言論統制をかいくぐる中国ネット社会

「月餅」のせいで工場閉鎖!? 

【コラム】言論統制をかいくぐる中国ネット社会

 中国が「抗日・反ファシズム戦争勝利70周年」の軍事パレードに向けた準備を盛んに進める間、中国のインターネット上では中秋節の伝統菓子「月餅(げっぺい)」がなぜかつるし上げに遭っていた。

 「月餅のせいで工場閉鎖だなんて話にならない」「月餅のせいで地下鉄やバスが来なくて、2時間も歩いた」「月餅のせいでマンションの窓も開けられない」

 3000年前から中秋節に食べられてきた月餅が突然嫌われ者になったのは、「閲兵」と「月餅」の中国語の発音(ユエビン)が声調こそ違うもののよく似ているからだ。中国政府が軍事パレードに対するいかなる批判も許さなかったため、ネットユーザーはまるで無関係の月餅を通じてうっ憤を晴らした。

 言論の自由が制限された中国でネットユーザーが「言葉遊び」で当局の規制をかいくぐろうとした例は今回にとどまらない。薄煕来・元重慶市共産党委書記の汚職事件では「不厚先生」という言葉が流行した。当局が「薄煕来」をインターネットのNGワードに指定したため、「薄い」という意味の「薄」という姓を「厚くない」と言い換えたものだ。

 周永康・元政治局常務委員の汚職事件でも、即席麺ブランドの「康師傅(カンシーフ)」という表現が登場した。周永康の「康」に通じる表現だが、周永康氏の天然パーマの頭髪が即席麺を連想させたことも元最高指導部がカップラーメン扱いされた理由だった。

 中国は今回の軍事パレードを大規模に開催し、抗日より反ファシズムを前面に掲げた。軍事パレードの目的が日本批判ではなく、軍国主義、ファシズム、ナチズムなど全体主義の復活に対する警戒にあるという名分を強調するためだった。しかし、北京大法学部の張千帆教授は米VOA放送に対し、「言論の自由と民主はファシズム台頭を防ぐ2つの堡塁(ほるい)だ」「現在の中国は第2次大戦直前の日本と似た面がある」と指摘した。元ジャーナリストの李大同氏も「言論の自由がないのはファッショ社会だ」と断じた。中国が軍事パレードの看板に「反ファシズム」を掲げたものの、中国内部からファシズムの影を懸念する声が上がっている格好だ。

 習近平国家主席は経済分野で改革開放を掲げる。最近発表された国有企業改革案も市場と自由を強調している。しかし、政治・社会分野では民主と自由を引き締め続けている。習主席の政治的スローガンである「中華民族の復興」も聞き流すことはできない。行き過ぎた民族主義は全体主義に流れるリスクがあるためだ。

 習主席は軍事パレードで「中国は永遠に覇権を追求しない」と述べた。しかし、そう述べたのもつかの間、領有権紛争がある南中国海(南シナ海)はもちろん、太平洋、インド洋でも勢力をアピールしているのが中国だ。

 日本は安保関連法を改正し、70年ぶりに「戦争できる国」となった。中国は軍事パレードで「軍事崛起(くっき)」を宣言した。韓半島(朝鮮半島)をめぐる北東アジアでの米日対中国の争いは日に日に激化しそうだ。その狭間で韓国は統一を成し遂げなければならない。北朝鮮は不安定だ。今こそ気持ちをしっかり持つべき時だ。

北京=アン・ヨンヒョン特派員
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