【記者手帳】韓国の大学で研究不正行為が後を絶たない理由

フランスでは不正行為が摘発されれば二度と研究職に就けず
韓国では身内をかばう意識が強く処罰が軽くなる傾向
政府はまず実態調査を

【記者手帳】韓国の大学で研究不正行為が後を絶たない理由

 韓国教育部(省に相当)が7月26日に公表した韓国教員大学に対する監査結果の報告書には、これまで韓国の大学や研究者などの間で何度も指摘を受けてきた研究不正行為のパターンがそのまま記載されていた。例えば未来の教師を養成する大学教授が、自分の指導する学生の修士論文を盗用し、自らの単著として発表したかと思えば、政府機関など2カ所からそれぞれ研究費を取得し、以前に自分が書いた論文を双方に提出するようなケースもあった。さらに自らの夫や妻を研究補助員として登録し、人件費を不正に申請・取得する厚顔無恥な大学教授の事例も報告されていた。

 昨年、教育部が韓国体育大学を対象に「研究分野」に特化して重点的に監査を行ったところ、116人の教授がさまざまな研究不正行為により懲戒処分を受けるという、まさに前代未聞の事態が発生した。しかも処分を受けた人数はこの大学の専任教員の数(112人)よりも多く、これでは大学全体が研究不正にどっぷり漬かっているとしか言いようがない。

 2年前には漢陽大学医学部のある教授が、自らが責任著者を務める論文に息子を「第1著者」として登録し、息子は医学専門大学院の入学選考の際にこれを業績として提出し、合格していたことが分かった。またつい最近では国立がんセンターのある教授が、まだ高校生の自らの息子を国際学術誌に掲載した論文の「第1著者」として登録していた。この息子は後に米国のハーバード大学に進学したという。

 このように研究不正を取り巻く問題が後を絶たず、何度も繰り返される最も大きな理由について、専門家の多くは「韓国では研究者たち自身が不正行為に対して非常に寛大なため」と指摘する。研究不正が行われたとしても「身内をかばう意識」が大きく作用して問題の公表を控えるか、あるいは問題が表面化した場合でも「警告」といった実質的には何の制裁にもならない処罰で終わらせるケースがほとんどだからだ。上記の国立がんセンターの教授に関して言えば、処分は3カ月の減俸だけで終わった。ちなみにフランスでは研究不正行為が摘発された場合、その後は研究者としての仕事が二度とできなくなるほどその制裁は厳しい。そのためフランスの研究者たちの間では「不正行為は絶対にやってはならないこと」という認識がしっかりと定着している。ところが韓国では不正行為によって得られる利益に比べると、摘発されたときに受ける不利益やリスクが非常に小さく軽いため「摘発されてもしばらくおとなしくしていればよい」といった考え方が広まっているのだ。

社会政策部=キム・ヨンジュ記者
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