サッカーゲームの季節到来。
毎年この時期は、サッカーゲームがリリースされる時期だ。
日本においては、サッカーゲームといえば「ウイニングイレブン(以下ウイイレ)」シリーズ一択といった感じだが、もう一つのサッカーゲームが毎年リリースされているのをご存知だろうか。
それが、エレクトロニック・アーツが発売している「FIFA」シリーズだ。
自分は、2007年にリリースされたウイイレ2008を最後にFIFAシリーズに乗り換えた。何故かと言うと、色々理由があるが、有り体に言えばウイイレにがっかりしたからだ。
正直に言うと、ウイイレ2008には非常に期待していた。なんといっても初めてPlayStation3で発売されるウイイレだし、PS2でのシリーズは進化の袋小路に入り込んでいた感があったので、ハードウェアが変われば大きな進化が望めると勝手に期待していたのだ。
だが、実際に遊んでみたウイイレ2008は、単なるPS2で出ていたウイイレの高画質版にしか見えなかった。追加要素としてフィーチャーされていた「マスターリーグの大幅進化」というのも、取ってつけたようなどうでもいいもので、オフ専の自分としては本当に失望した。
自分は、サッカーが大好きだし、サッカーゲームで遊ぶのも大好きだ。だから、楽しく遊べるサッカーゲームがないというのは死活問題だった。そんな中、すがるような気持ちで手を出したのが「FIFA08」の体験版だった。
さようならウイイレ。こんにちはFIFA。
FIFA08は2007年にリリースされたサッカーゲームだ。
当時のFIFAシリーズはまだ荒削りなところがあって、 操作感ももっさりしていた。だが、ウイイレと比べて明らかに優秀なAIに驚いた。前方にスペースがあるときにボールをキープしていると、サイドの選手がきっちりそこに走りこんでいってくれる。これは衝撃的だった。
さらに、「トリガーラン」という操作があって、ボタンを押す事によって自分の好きなタイミングでスペースに選手を走りこませることが出来た。そういう「チームで戦っている感覚」に優れたゲームだと感じた。
だが、やはり前述のモッサリ感が気になって、購入するところまでは至らなかった。
転機になったのはその次の年である2008年だ。
正直いって、ウイイレを遊び続けることに不安を感じていた自分は、その年はウイイレとFIFAの体験版を遊んで、面白いと感じた方を買おうと決めていた。
ウイイレとの付き合いは、初代PlayStationで発売された「Jリーグウイニングイレブン」からだから、相当長かった。そんな自分が、違うサッカーゲームに乗り換えるためには、それなりの決心が必要だった。
そんな思いを抱えながらウイイレ2009の体験版を遊んでみたが、やはりウイイレはそれ程進化したとは感じられなかった。
もうハードウェアの世代が交代しているというのに、まだ選手のモーションはカクカクのままだし、ボールの動きも不自然で、さらに選手も自由に動かせている感じはしなかった。そもそも「スーパーキャンセル」などという特殊な操作が必要なゲームデザインは、欠陥なのではないかと感じていたのだ。
対してFIFA09は、前年のFIFA08と比べてモッサリ感がかなり解消され、操作しやすくなっていた。自分が優秀と感じたAIは更に進化しており、ゲーム自体のスピードはウイイレと比べて劣っているものの、選手のモーションは凄く滑らかで、これなら1年間遊べるのではないかと感じられる出来だった。
というわけで、自分はその年からウイイレを見限り、FIFAへと鞍替えしたのだった。
日本以外ではガリバーと化したFIFA。
ゲームに興味が無い殆どの人は、FIFAシリーズの事はあまり知らないかもしれない。最近は、モバイルアプリのFIFAシリーズが基本プレイ無料でリリースされているので、まあ名前くらいは知っていると言う人もいるだろう。
だが、ワールドワイドで見てみると、FIFAはウイイレとは比べ物にならないほど売れているシリーズなのだ。実際、FIFAシリーズは毎年1000万本を超える売上を叩きだしており、昨年のFIFA15は発売初週で500万本を売上げている。
一方、ウイイレ2015は詳細が発表されていないのでどのくらい売れているのか不明だが、日本国内でも初週が10万本にも届かなかったことを考えると、ワールドワイドでもかなり苦戦しているのではないか。
とはいえ、ウイイレは2015から海外での評価も高くなり、かつての面白さを取り戻したと言われる。だが、自分はもうウイイレには戻れない。FIFAにどっぷり浸かってしまった今では、もはやウイイレを今からやろうとは思えないのだ。なぜって、FIFAはほぼ全てのチームと選手が実名(ただし、選手名は英語表記)で登場するからだ。
自分は、サッカーならなんでも見るサッカーオタクだが、Jリーグ以外で一番よく見ているリーグがイングランドのプレミアリーグだ。FIFAはそのプレミアリーグと独占契約をし、なにもかもテレビ中継そのままのゲームプレイを再現した。
スタジアムは全チームが再現され、一部の有名スタジアムはその外観までもが出てくる。チャント(応援歌)もスタジアムで本物を収録、試合前にはプレミアリーグのアンセムが鳴り響き、FIFAシリーズの弱点と言われ続けた試合中の演出も、前作からかなり強化されて、見ていて飽きないものになった。
レギュレーションも完全再現され、FAカップやキャピタル・ワン・カップなども実名で登場し、FAカップに至ってはドローに終わった時の再試合(FAカップは引き分けると1試合だけ再試合を行う)まで再現されているのだ。
さらに、今年のFIFA16では新たにブンデスリーガの画面エフェクトも再現。普段テレビで見慣れている画面そのままの演出の中遊べるというのは、ウイイレにはないFIFAのアドバンテージだ。
自分がメインで遊んでいる「キャリアモード」は、世界中の(ほぼ)実名チームから好きなチームを選んで遊ぶことが出来る。欧州サッカーをよく見る人なら、欧州リーグのチームで遊べば、各国のレギュレーションが再現されていることにきっと驚くだろう。
ただ、UEFAのライセンスは現在コナミが持っているので、チャンピオンズリーグとヨーロッパリーグは実名の大会ではない。だが、それに相当する架空の大会が用意されていて、各国の上位チームはその大会に出られるという所は変わらない。
さらに、大きなリーグは1部リーグだけでなく2部リーグも収録されている。イングランドだけはやたら充実していて、なんと4部リーグまで実名で収録されているのだ。だから、プレミアリーグのメガクラブではなく、現存する世界最古のプロチーム、ノッツ・カウンティ(4部リーグ所属)をプレミアリーグに導くなどというマニアックな事も出来る。
どちらを買うかは、あなた次第。
というわけで、ダラダラと語ってきてしまったが、ウイイレはウイイレで昨年からようやくゲームエンジンを刷新して、ゲームプレイ部分が改善された。だが、そのエンジン「FOXエンジン」を開発したメインスタッフはコナミを退社してしまった。なぜなら、コナミはもうお金のかかる大作ゲームを開発するつもりはないからだ。
FIFAシリーズの進化がここ数年停滞しているのは自分も感じている。だが、だからといって今ウイイレに乗り換えるかと言われれば「No」だ。
コナミは、ウイイレだけはまだワールドワイドで勝負できるし、現世代機で通用するFOXエンジンを手に入れたので開発を続けるつもりなのだろうが、それもいつまでなのかはわからない。
コナミをこれまで支えてきた数々のゲームを作ってきたクリエイターが次から次へと退社しているという事実もあり、正直いって自分は「ゲーム会社としてのコナミ」を信用することは出来ない。
FIFAシリーズにはJリーグや日本代表は収録されていない。それは、日本での売上がそれ程でもなく、重要な市場とみなされていないからだ。だからこそ、自分はFIFAが日本で売れて欲しいと思っている。
FIFAが日本で売れるようになれば、EAもJリーグや日本代表のライセンス取得を検討すると思うし、女子代表チームが収録されたにも関わらず、なでしこジャパンがないなどという状況も改善されると思う。
コナミはもう昨年からJリーグパックのDLCを提供することもやめてしまった。JリーグのサポーターはACLに出場する数少ないチームが収録されるという、今の状況に満足してはいないはずだ。
勿論、ウイイレとFIFAのどちらを買うかはその人の自由だ。
だが、少なくとも自分は、ゲームファンを裏切ったコナミのゲームをもう二度と買うことはないし、正直ウイイレにはUEFAのライセンスを手放して欲しいと思っている。だって、ゲームを本気でやる気のない会社にライセンスを保持されているのは迷惑だからだ。
本当は、こんな消去法で遊ぶゲームを選ばなければならなくなってしまった現状が、とても寂しい。ウイイレとFIFAには、お互いに切磋琢磨しながら刺激をしあって、最高のゲームを提供して欲しかった。
その願いは、もう叶わない。