<仙台いじめ自殺>報告できる環境整備を
◎悲劇をなくすには(中)仙台弁護士会子どもの権利委員会委員長 藤田祐子さん(42)
−いじめに対する仙台弁護士会の取り組みは。
「2011年7月に『子ども悩みごと電話相談』を開設した。宮城県内外からこれまでに200件超の相談があり、いじめ関連が約2割を占めた。被害者側の保護者が多い。教師と児童生徒を対象に、いじめに関する出前授業もしている」
−弁護士はいじめの解決にどう関わるのか。
<入れ替わる立場>
「いじめが進行中の場合はクラス替えが可能かどうかや、学校と協議の場が持てるかなどの調整に入る。弁護士が介在すると学校は非常に警戒するが、敵対したり提訴したりするためではない。争いが発展しないよう着地点を探す目的であることを理解してほしい」
−難しさを感じる点は。
「被害者側と加害者側の事実認識が違ったり、互いにいじめ合ったりして、被害側か加害側か判然としないこともある。立場が固定的でなく、容易に入れ替わる側面も見られる」
−子どもの権利の観点から見た「いじめ」とは。
「被害側の権利を守るための支援が第一だが、加害側も家庭や大人への不満や不安、不信が本来向くべきではない相手(被害側)に向くことがある。子どもが抱える不満や不安を、子ども主体で考えて対応しないと、いじめの防止も解決もできない」
−いじめ防止対策推進法の施行から9月で2年が過ぎた。
<保身 敏感に察知>
「刑事事件の加害者と被害者のようにいじめをした側と受けた側に分け、被害側を保護し、加害側を指導するという単純な区分をしている点に疑問がある。法4条は『児童生徒は、いじめを行ってはならない』と定めるが、それでいじめがなくなるだろうか」
−学校や教育委員会、保護者に必要な姿勢は。
「(学校と教委は)事実を隠さず、教師を責めないことだ。責任回避のため事実を隠したり、いじめと認めなかったりしがちだ。教師の保身を子どもは敏感に察知する。教師が事実を迅速、正確に報告できる環境にすべきだ」
「保護者は子どもの希望を優先した方がいい。いじめられ、学校に行きたくないようなら『行かなくていいよ』と言ってあげることも必要だ」
2015年09月30日水曜日