文/アレクサンドラ・オルター
電子書籍の売上が急に鈍化した
5年前、紙の本の将来が読めないことで出版界全体がパニックに陥った。
読者が新しい電子デバイスに移行するのに伴い電子書籍の売上は急増し、2008年から2010年の間に1,260%も上昇した。それは書店に対し、棚を物色中の客は後でオンラインで購入する本を見つけるために店舗を使っているのだとの警告を発することになった。
紙の本の売上は落ち、書店は営業を維持するのが困難になった。そして出版社と著者たちは、紙の本より安い電子書籍が自分たちのビジネスで共食い状態になることを恐れた。
そして、2011年にボーダーズ社が倒産宣言した時、業界が恐れたことは現実となった。
出版業界の動向を追っている非営利調査グループ「書籍業界研究グループ」の元事務局長であるレン・ヴラホスは、「電子書籍は、まっしぐらに空に向かう宇宙船でした。そしてほとんどの人が、我々は、デジタル音楽が辿った道を進んでいるのだと考えていました」と語っている。
しかし「デジタル黙示録」は、少なくとも予定通りには訪れなかった。かつてアナリストたちは、電子書籍は2015年までに印刷本を超えると予言したが、その代わりに最近はデジタルの売上が急速に鈍化している。
現在は、電子書籍に飛びついた人々が紙の本に戻る、もしくはデバイスと紙の両方を使い分けるハイブリッド型読者になりつつある兆候が見られる。
約1,200の出版社からのデータを収集している米国出版者協会によると、今年の最初5ヵ月間で電子書籍の売上は10%落ちたという。昨年は、電子書籍の市場占有率は約20%で、これは数年前と同水準だ。
出版業界は、もちろん技術上の大きな変化の影響を避けることはできない。
しかし電子書籍の人気が低下しているのは、出版業界は音楽やテレビなど他のメディアよりもうまく、押し寄せるデジタル技術の波を乗り越えるだろうことを示唆しているのかもしれない。
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