新国立競技場、経費高騰の主犯は、この人! 飯島 勲 「リーダーの掟」

新国立競技場、経費高騰の主犯は、この人! 飯島 勲 「リーダーの掟」

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  • 更新日:2015/09/29

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ザハ案について専門家も太鼓判

新国立競技場の建設計画が白紙撤回された。総工費2520億円の見積もりに対する世論の批判に応えた形だ。しかし、予算が巨額に膨らんだ原因は、本当にキールアーチ主体のデザインなのだろうか。建築家のザハ・ハディド氏は「建設費の高騰はデザインが理由ではない」との声明を発表した。

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建設費高騰はキールアーチが原因ではない メディアによる過剰な報道の結果、完全に悪者にされた感のあるザハ氏だが、問題があるのはゼネコンであり民主党であろう。(写真=時事通信フォト)

旗色が悪いことを承知のうえで、私は彼女に同意したい。ゼネコンの幹部にも問い合わせて確認したが、ザハ氏は悪くない。そして、事実関係をどう検証しても下村博文・文部科学大臣に責任はない。

日本のメディアで諸悪の根源のように扱われているキールアーチ構造だが、採用しているスタジアムは多い。建設コストもそれほど高くない。

2000年のシドニー五輪、04年のアテネ五輪のメーンスタジアムはキールアーチ構造が採用されていて、総工費はそれぞれ、680億、350億円と報じられている。ロンドンの8万人収容のウェンブリー・スタジアムは、1本のキールアーチ構造を採用して1000億円だ。

日本にもたくさんある。サッカー専用だが、新国立と同じくキールアーチ2本の埼玉スタジアム2002は収容人数約6万3000人で350億円。キールアーチに加えて開閉式の屋根まで付いた愛知県の豊田スタジアムは収容人数約4万5000人で約300億円。いずれも10年以上前に建設されたもので、ザハ氏のデザインのような太いアーチを使っているわけではない。収容人数8万人、開閉式屋根、可動式座席、大地震に備えた免震構造といった新国立競技場の設計の要件とは違うことは承知しているが、屋根だけで1000億円などという見積もりがありえないことがわかる。

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今回、発表されたザハ氏の声明でも、アーチ1本にかかる費用は230億円だとしている。ザハ氏サイドでは、本体部分を含めても当初予算の1300億円以内で完成できると見積もっていたようだ。新国立のキールアーチが高騰したのは、製造を担当する新日鉄(現・新日鉄住金)に原因はないのだろうか。同社が手がけた東京スカイツリーの建設費も相場より高かったという噂を聞いたことがあり、国土交通省や多くの建設関係者が疑いの目を持っている。そもそも最大手の日建設計と現場のゼネコンの見積もりがここまで大きく食い違うのはありえない。

12年秋のコンペ段階でもザハ氏案の事業費についての木本健二・芝浦工大工学部建築工学科教授による評価は、「○(特段の所見なし)」で特に問題とされていない。翌年、日本最大手の設計事務所である日建設計から施工主である日本スポーツ振興センター(JSC)に対して「総工費が1700億から1800億円程度かかる可能性がある」との一報が入ったが、キールアーチが原因だとはされておらず、あれこれ縮小すれば1300億円に収まる範囲だ。大手ゼネコンにいる私の知人に確認したところ、絶対に1300億円でできると話していた。

それがなぜ、2520億円になってしまうのか。私が気になったのは、13年8月に日建設計・梓設計・日本設計・アラップ設計共同体(JV)が出した最初の見積もりの総額3520億円という数字だ。開閉式屋根や可動式座席で8万人収容などのフルスペックだとこの金額になってしまうという。

しかし、専門家に聞いてみると、確かにこれらの諸要件にコストがかかるのは理解できるが、近年主流となってきたPC(プレキャスト鉄筋コンクリート)工法を採用していないのが、建設費高騰を招いたのではないかという。PC工法は工場で建物の部材をあらかじめ製造しておき、現場では組み立てるだけで建てる方法だ。住宅をはじめ広く普及している。工場で製造することで、製品の品質管理を向上させ、現場での作業時間を縮減できる。現場での作業が減るので熟練工の拘束日数も減少し、人件費も圧縮できる。最終的に工期全体も短縮。おまけに、現場での作業に必要な木製型枠も使用しないため、地球環境にもやさしいのだ。

しかし、このPC工法ではゼネコンが儲からない。ゼネコンは公共事業において、いろいろな理由をつけてPC工法をさけようとするだろう。PC工法は、ガチガチに組み立ててしまうので解体がしづらい。解体業者が苦労するほど完璧なものができるなら、PC工法でよかったのではないかと思うし、これからどんな設計になるにしろ、ゼネコンがどんな理屈を言い出そうが、PC工法を採用させなくてはいけない。その意味で監督官庁が、国土交通省ではなく、文部科学省だということに非常に不安を覚える。現場のゼネコン試算が高すぎたとしても、民間の事業であればどうデザインを活かして不要な工事を減らすか頭を使うはずだ。

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困ったときの国交省の営繕部

計画にGOサインを出したのは、民主党政権下の文科大臣である田中真紀子氏だ。ラグビーワールドカップと五輪招致を目指して新国立競技場の建設案が浮上したのも、予算がついたのも、国際コンペが行われたのも民主党政権下のこと。事実関係からして下村氏は田中氏の尻拭いをしているだけなのに、責任問題に発展しているのが不思議でならない。民主党政権時代の素人大臣の下で行政がまともに機能していなかったことも不幸を招いた一因だ。

新国立競技場建設という巨額の予算を獲得した文科省が舞い上がってしまい、公共工事の経験が豊富な国土交通省に協力を仰ぐことなく、計画を内部で抱え込んでしまった。専門知識のある人間がチェックすることなく計画が進むとこういうことになる。

12年末に政権交代が実現し、翌13年に東京五輪が決定。安倍内閣で建設の具体化に向けて動いてみたら、どんどん総工費が増えた。

例えば、安倍内閣の下で計画からスタートした16年の伊勢志摩サミットでは、5000人程度の報道関係者を収容できる2万ヘクタール規模のプレスセンターの建設が必要となり、予算を獲得する外務省は早々に国交省の営繕部に丸投げするらしい。公共工事は公共工事のプロに任せるべきだ。それが今回の一番の教訓だ。

ザハ氏側は反論声明でコストが高騰した理由として「価格競争がないまま早い段階で建設業者が決定した」と問題点を指摘している。

ザハ氏の言い分が正しいのであれば、当初予定の1300億円で建設できる業者を見つけることができるはずだ。それは海外のゼネコンであっても信用に足りる大きい企業であれば問題はない。ザハ氏のデザインを白紙に戻す前に、世界のどこかから1300億で新国立競技場を建設できる業者を探してもらおう。それができないのであれば違約金を払ってもらえばいい。せっかくザハ氏側が協力を申し出ているのだから、働いてもらおうではないか。今のままでは、建設しない建物に高額な監修料を税金で払って終わりになってしまう。

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