岸朝子さん、遺言は「お通夜とお葬式はおいしいお料理を」
フジテレビ系バラエティー番組「料理の鉄人」(1993~99年)で審査員を務め「おいしゅうございます」のコメントで人気を集めた食生活ジャーナリストの岸朝子(きし・あさこ)さんが22日午前3時16分、心不全のため東京都千代田区の病院で死去した。91歳だった。葬儀・告別式は近親者で行った。11月14日に都内でお別れの会を開く。喪主は次男・俊行(としゆき)さん。食べることを何よりも愛した岸さんの遺言は「お葬式にはおいしいお料理を」だった。
あの名セリフ「おいしゅうございます」はもう聞けない。料理の魅力を60年間にわたって伝え続けた岸さんが帰らぬ人となった。
岸さんが代表を務めていた事務所スタッフの次女・小宮裕子さんによると、岸さんは大病の経験もなく今年6月まで著書出版や講演などで精力的に活動していたという。ただ、7月中旬に猛暑の影響もあり食欲をなくしたことで、点滴で栄養補給を受けるようになった。大事を取って都内の病院に入院したが、病室では元気な様子で「テレビのグルメ番組を見て『おいしそうね』なんて言っていました」(裕子さん)。ところが、今月22日未明に容体が急変。意識不明となり、息を引き取った。
「本当に食べることが大好きな母で、食への興味や関心が尽きることはありませんでした。おいしいものを食べて健康に、長寿にというのが母のメッセージだったので、生涯を通じて全うした人生だったと思います」(裕子さん)。
1923年(大正12年)生まれ。52年、食あたりによる赤痢で4歳の長男を失い、食に対する考え方を変えた。専業主婦として3人の娘の育児に追われながら、32歳の時に一念発起して主婦の友社に入社。ちょうど次男の臨月に、料理記者としてのキャリアを歩み始めた。当時はまだ家庭と仕事を両立させる女性は珍しかった。
一躍有名になったのは、93年放送開始の「料理の鉄人」で審査員を務めてから。おしとやかに「おいしゅうございます」と感想を語る姿が話題となった。95年には最愛の夫・秋正さんを78歳で失ったが、99年の番組終了まで出演を続けた。
好き嫌いは一切なく、口に入れるもの全てに感謝の念を忘れなかった。遺言は「お通夜とお葬式はにぎやかに。おいしいお料理を」。裕子さんは「突然のことだったのでお通夜とお葬式では難しかったのですが、お別れの会ではおいしいお料理でおもてなししたいと思います」と話している。
◆岸 朝子(きし・あさこ)1923年11月22日、東京都文京区生まれ。沖縄県出身の父・宮城新昌さんは日本初のカキ養殖を成功させた人物。母は琉球王国士族の子孫。42年、女子栄養学園(現・女子栄養大)卒。43年、陸軍少佐の岸秋正さんとお見合い結婚。55年、主婦の友社入社。68年、女子栄養大出版部「栄養と料理」編集長に。79年、料理専門の編集プロダクション設立。著書に「このまま100歳までおいしゅうございます」「老いは楽しゅうございます」など。
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